レギュラトリーサイエンス学会誌
Online ISSN : 2189-0447
Print ISSN : 2185-7113
ISSN-L : 2185-7113
資料
治験依頼者による実施医療機関への安全性情報伝達の現状と今後の展望
豊田 浩子渡部 ゆき子衣川 佳伸友谷 美知子松浦 潤治松澤 寛
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 12 巻 1 号 p. 25-36

詳細
抄録

治験依頼者が治験責任医師および実施医療機関の長に被験者を保護するための安全性情報を伝達することは「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)に基づいて行われている.この安全性情報の伝達方法に関して日本製薬工業協会(以下,製薬協)は2009年にガイダンスを提案した.この提案から10年以上が経過し,その間に国際共同治験の増加など治験を取り巻く環境の変化があった.そこで,実施医療機関および治験依頼者(企業)に対して,治験における安全性情報の伝達について2019~2020年に現状調査を行った.その結果,緊急かつ重要な情報は迅速に伝達し,それ以外の情報とでは伝達期限にメリハリをつけていた.また,製薬協が提案してきた共通ラインリストが普及していることが確認できた.伝達の効率化がみられる一方で,実施医療機関へ伝達する安全性情報の量はこの10年で増加しており,特に日本特有の要求事項である外国市販後情報はかなりの割合を占めている.これは,これまで法規制上解決することのできない課題であったが,2019年に「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」の一部が改正され,被験薬の外国市販後症例に関しては条件によって報告免除とすることが可能となり,伝達量の軽減が期待できることとなった.一方で,新たに治験使用薬という概念ができ,伝達対象として被験薬以外に併用薬なども含まれることとなった.これにより,伝達すべき安全性情報の量の増加が予想されることから,さらにメリハリのある情報伝達が求められる.今回の薬機法改正による変化に対し,治験依頼者は治験での安全性情報の取り扱いにおいて新たな課題に対応し,被験者の安全を確保することが重要である.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top