2022 年 12 巻 2 号 p. 125-141
新医薬品開発において,経口投与医薬品の食事の影響を評価することは必須である.吸収に及ぼす食事の影響は,規制文書にもとづき,通常臨床開発の初期段階で検討され,また,最終製剤を用いた食事の影響試験(以下,FE試験)も実施されている.本研究は,2010年度から2019年度までに日本で承認された経口投与の新有効成分含有医薬品開発時に実施されたFE試験を系統的に評価し,新医薬品開発におけるFE試験デザインと実際的な留意点について考察した.典型的なFE試験デザインは,健康成人を対象とした臨床用量での単回投与による,高脂肪食摂取後と空腹時のクロスオーバーデザインであった.FE試験が実施されなかった場合,また標準的な試験デザイン以外のFE試験が許容されたケースについて整理した.低い溶解性を示す原薬,徐放性製剤などの製剤,消化管からの吸収への影響が示唆される添加剤の処方変更があった場合では,基本的に最終製剤を用いたFE試験を実施すべきと考えられた.原薬特性または疾患によっては複数の食事条件下でのFE試験にもとづく情報は有用である.一方,高溶解性かつ高膜透過性を示す原薬の即放性製剤では,バイオアベイラビリティへの食事の影響は限定的であり,初期段階に検討したFE試験成績は,情報提供に利用可能と考えられた.本研究で得られた知見は,新医薬品開発におけるFE試験の計画,実施および評価における具体的な留意点として役立つと考える.