2023 年 13 巻 1 号 p. 23-37
医薬品医療機器総合機構(PMDA)では,医薬品の副作用等による健康被害者に対して,給付金を支給することにより迅速な救済を図る健康被害救済制度の運用にかかる業務を実施している.これは,審査業務や安全対策業務と並ぶPMDAの三つの柱の一つであり,2021年度は,約1,400件の請求に対して2,376百万円の給付金の支給が行われた.制度創設の背景には,サリドマイドやスモンなどの大規模薬害事件の苦い経験がある.薬事規制における安全対策の強化に加えて,被害者の現実的かつ迅速な救済のために従来の法的責任論とは切り離した独自の仕組みが必要とされたことから,国会での審議を経て1980年に医薬品副作用被害救済制度がスタートした.その後,2004年には生物由来製品等感染被害救済制度も加わり,組織体制の整備などを経て現在に至る.今後に向けての課題のうち,「制度の運用上の課題」については,「健康被害救済制度の運用改善に関する検討会」のとりまとめを受けて改善を図ることとしており,PMDAの年度計画にも改善策が盛り込まれている.また,組織管理,人的資源管理の観点にもとづく「制度の運用主体としての組織マネジメントの課題」として,業務を担当する職員のモチベーションを引き出して成果を上げるためのマネジメントのあり方などについて検討している.