2023 年 13 巻 3 号 p. 179-192
近年,健康面,供給面で信頼性を損なう恐れのある後発医薬品の回収事例が発生している.そこで本研究では,医薬品回収件数の経時的推移を調査することによって現在の医薬品回収の実態を明らかにし,後発医薬品の信頼性向上,使用促進のための課題を検討することを目的とした.2018年度から2022年度前半6カ月までに回収された医療用医薬品を対象とした.回収情報をクラス,品目,剤形,薬効,回収理由,製造販売業者ごとに分類し,年度ごとに集計解析を行った.2018年度から2021年度まで,回収件数の合計は毎年増加していた(2018年度:111件,2019年度:141件,2020年度:271件,2021年度:507件).2022年度の上半期は64件の回収があった.後発医薬品は30.6%,41.1%,74.2%,91.1%と増加傾向にあった.後発医薬品の回収増加の原因として,安定性モニタリングなどでの承認規格外,承認書からの逸脱による回収の増加がみられ,先発医薬品では発生していない理由での回収も確認された.回収件数の減少,後発医薬品の信頼性向上のためには,品質管理体制の整備,法令遵守と倫理の再教育を行う必要があると考えられる.