2024 年 14 巻 2 号 p. 187-194
2023年6月に発行されたOECD GLP Advisory Document No. 17 Supplement 1(OECD GLPガイダンス)により,クラウドシステムを使用するために適用されるGLP原則の要件が明らかとなった.クラウドシステムを使用する場合,GLP試験施設は,Data Integrity,データの品質,データの可用性,データの保持,およびデータアーカイブに対するリスクを評価し,GLP適合に最終的な責任を負うことが示されている.国内のGLP施設においては,紙記録を取り扱っている施設が多いため,現状クラウドシステムを利用したGLP施設は多くはないと思われる.しかし,資料保存スペースの問題やLIMSデータのアーカイブがクラウド仕様になりつつあることを鑑みると,電子データの管理にクラウドシステムの利用が増加することが推察される.そこで,GLP試験施設がGLP要件を遵守したクラウドシステムを容易に導入できるように,SaaSシステムを使用したGLP電子データのData Integrityの確保のためのスポンサーとシステムサプライヤーとのGLP運営体制とリスク評価の視点を検討した結果を紹介する.これにより,国内GLP施設の電子データ管理の信頼性確保および生産性向上に貢献し,医薬品早期上市の一助となれば幸いである.