2024 年 14 巻 3 号 p. 283-291
本研究では臨床研究データの薬事申請への現状の活用状況を調査するとともに,現状治験を実施して承認された製品の傾向を分析し考察を行うことで,現在,治験が必要な製品の臨床研究データでの代替可能性と利活用の方向性の検討材料を提供することを目的とした.調査対象は,2013年4月から2023年3月までの10年間に承認された製品のうち臨床評価を実施して承認された製品を対象とした.PMDA(医薬品医療機器総合機構)のウェブサイト公開データで薬事申請に利用した臨床データの種類の記載があった製品のうち,国内臨床研究を使用して承認されたケースは少ない傾向にあった.また現在,治験を実施して承認された製品にはハイリスクで比較的新規性のある製品と,改良医療機器で治療法としての実績はあるが原材料変更など,改良点の臨床的付加価値が比較的小さいものの,人での使用経験がないため実施したと思われるものが多い傾向にあった.後者の場合は,信頼性保証に十分配慮したうえで実施した臨床研究データであれば有効性,安全性の確認を代替できる可能性がある.行政が各臨床エビデンス(治験,臨床研究,文献など)に応じた事例を明示することがさらなる臨床研究データの利活用につながると考える.