レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集( 医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクへの対応)
医薬品におけるニトロソアミン類の混入への行政の対応について
鳥谷部 貴祥
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2025 年 15 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

 近年,国内外において,サルタン系医薬品,ラニチジン,ニザチジンおよびメトホルミンなどから,発がん性を有する可能性のある物質であるニトロソアミン類が検出され,一部の製品が自主回収された.ニトロソアミン類が検出された医薬品以外の医薬品でもニトロソアミン類が混入している可能性は否定できず,また,その混入リスクを可能な限り低減することは重要であることから,厚生労働省は,製造販売業者に対してニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検を行うよう通知した.その後,自主点検を円滑に行うために取りまとめた質疑応答集を改訂し,海外で導入されたThe Carcinogenic Potency Categorization Approach(CPCA)for N-nitrosaminesを国内でも導入した.また,厚生労働科学特別研究事業において,国内外の医薬品のニトロソアミン類の混入事例を収集・整理し,CPCAにもとづく発がん性リスク評価などの毒性学的観点から情報提供すべき項目を検討し,情報提供すべき項目の類型化と関係機関との連携方法などが整理されたリスクコミュニケーションガイダンスが策定された.策定されたガイダンスを周知するとともに,その活用方法を検討し,ニトロソアミン類の健康影響評価結果が医療現場へ迅速に情報提供されるよう考え方を整理し,今後の事例発生に備えたところである.引き続き,医薬品におけるニトロソアミン類の混入の課題解決につながる行政施策を企画・実施していくこととしたい.

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