レギュラトリーサイエンス学会誌
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報告
レギュラトリーサイエンス教育と研究への取り組みに関する欧米の現況
塚本 桂松丸 直樹
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2016 年 6 巻 2 号 p. 163-169

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抄録

レギュラトリーサイエンスが担う重要な役割のひとつは, 医療製品のベネフィットとリスクを評価するために科学的な見地を提供することであり, 開発, 承認, または販売のどの過程においても, 様々な利害関係者の意見を一致させるために重要な手法となっている. そのため基礎科学から社会科学に至る広範囲の領域を包括的に対処せねばならず, また, 日進月歩の技術革新にも対応していく必要がある. したがって, レギュラトリーサイエンス研究の進歩は必須であり, また, 教育を介した人材育成も急務である. 本稿では, 欧州と米国におけるレギュラトリーサイエンスの研究と教育に関する最新状況を調査したので報告する. 米国における顕著な変化は, 米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration ; FDA) がレギュラトリーサイエンスと革新のための中核研究拠点Center of Excellence in Regulatory Science and Innovation (CERSI) を, 2014年に西海岸へ拡張したことであった. その背景として, バイオテクノロジーや情報通信技術に関する多くのベンチャー企業が西海岸に位置している地理的な要因が挙げられ, FDAがこれらの企業を医療領域における次の立役者として認識していることによるものである. ヨーロッパでは, 欧州医薬品局 (European Medicines Agency ; EMA) がFDAと異なった方針の基で活動している. すなわち, EMAは共同研究活動には参画するものの, 金銭的なサポートは厳格に除外されている. それよりも, EMAは医療製品の品質, 安全性, 有効性の観点からEU内各国間の規制レベルを同レベルにする教育に注力している. この調査は, 世界2大規制当局が現在レギュラトリーサイエンスの研究と教育をどのように推進しているかを明らかにしたものである. このような諸外国の事例を参考に, 本邦においてもグローバル化に対応しつつ, かつそれぞれの特徴を生かしたレギュラトリーサイエンスの進展と人材育成を促進することが期待されている.

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© 2016 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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