レギュラトリーサイエンス学会誌
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6 巻, 2 号
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原著
  • 高山 茜, 成川 衛
    2016 年6 巻2 号 p. 119-126
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, わが国の薬価算定における補正加算などの適用状況を提示し, 有用性加算および営業利益率の加算的補正の取得に影響を与え得る要因を検討した. 2004年10月から2014年12月の期間に, 464の新薬が薬価収載され, うち285医薬品 (61.4%) が類似薬効比較方式で, 135医薬品 (29.1%) が原価計算方式で薬価算定された. 類似薬効比較方式で算定された285品目のうち, 89品目 (31.2%) が有用性加算を取得した. 原価計算方式で算定された135品目のうち, 33品目 (24.4%) が営業利益率の加算的補正を受けた. 類似薬効比較方式 (Ⅰ) で算定された品目において, 新規の作用機序を有する品目では, その他の品目と比べ, 有用性加算を取得した品目割合は大きく (p<0.0001), さらに, 実薬を対照として優越性が検証された品目では, 非劣性が示された品目 (p=0.0013), プラセボを対照として有効性が検証された品目 (p=0.0046) と比べ, 有用性加算を取得した品目の割合は大きかった. 同様に, 原価計算方式で算定された品目において, 実薬を対照とし有効性が検証された品目では, 単群試験のみが実施された品目と比べ, 営業利益率の加算的補正を受ける品目の割合は大きかった (p=0.0021). 一方, 適用された加算率および加算的補正率の大きさについては一定の傾向はみられなかった.
  • —非弁膜性心房細動, 2型糖尿病, 慢性閉塞性肺疾患, 双極性障害, 胃癌, 大腸癌を対象とした調査結果からの提言—
    小山 暢之, 山本 英晴
    2016 年6 巻2 号 p. 127-137
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    医薬品開発の国際化が進み, 日本を含む国際共同治験が年々増加している. 医薬品の有効性や安全性には民族的要因が影響する可能性があることから, 厚生労働省は「国際共同治験に関する基本的考え方」のなかで, 国際共同治験を実施する場合は, それぞれの地域において民族的要因が治験薬の有効性, 安全性に及ぼす影響について評価するよう求めている. しかし, どのような民族的要因が治験薬の有効性, 安全性に影響を及ぼすかは, 薬剤や対象疾患のみならず国際共同治験の実施地域や試験デザインなど様々な条件に依存するため, それらを特定することは必ずしも容易ではない. 本研究で一部の疾患に対して過去に国際共同治験のデータを利用して国内で承認を取得した医薬品の審査報告書を調査したところ, 国際共同治験で結果に地域間差が生じたケースは, 疾患の予後因子やリスク因子である民族的要因の分布が地域間で異なることが原因となっており, 特定の地域に限って影響を及ぼすような民族的要因が指摘されたことはなかった. この結果は, Komiyama らが提唱する3-layer approachが国際共同治験のデータの評価に適用可能であり, 特定の地域における有効性や安全性の推定には, 部分集団解析だけでなく, 適切な民族的要因を含めた統計モデルが利用できることを意味する. 今後も国際共同治験から得られる民族的要因に関する情報を蓄積して, それぞれの疾患で医薬品の有効性や安全性に影響する可能性のある民族的要因を特定していくことが重要である.
  • 高松 大騎, 小林 江梨子, 伊藤 晃成, 佐藤 信範
    2016 年6 巻2 号 p. 139-150
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    医療保険制度における薬剤服用歴管理指導料の算定は, 現在, 紙形式の手帳が従来より用いられている. 薬局を対象として, 紙形式および電子化形式のお薬手帳に含まれるデータの種類などを明らかにするため, アンケート調査を行った. また, 薬局に来局した患者を対象として, お薬手帳に対する患者の意識を明らかにするため, アンケート調査を行った. 1,000薬局のうち547薬局が回答を返送してきた. 対象としたすべての薬局が “紙媒体のお薬手帳” を利用していたが, “電子化お薬手帳” を “紙媒体のお薬手帳” とともに使用している薬局は, 回答した薬局の15.9%にすぎなかった. 307人の患者に回答を依頼し227人の患者が回答した. “電子化お薬手帳” を利用している患者は, 回答した患者の0.5%にすぎなかった. また, “電子化お薬手帳” に記載されている項目は, “紙媒体のお薬手帳” に記載されている項目に比べて少なく, ばらつきがあった. お薬手帳を利用している患者のうち, 20.9%はお薬手帳に自分自身で情報を記入することがあると答えた ( “血圧”, “体調の変化” など). お薬手帳に対する患者の意識としては, お薬手帳の情報を, “みせたい医療関係者だけにみせたい” とする患者と, “医療関係者ならだれでもみてもらってよい” とする患者に考え方が二分していた. したがって, “電子化お薬手帳” の運用にあたっては, “紙媒体のお薬手帳” の項目と同様の項目を網羅して記載すること, 患者の意識に応じて閲覧の制限ができることなどが必要と考えられた.
  • Yoshikazu HAYASHI, Rena NISHIGAKI, Satoshi TOYOSHIMA
    2016 年6 巻2 号 p. 151-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    チーム医療において他職種と協働・連携できる実力を備えた薬剤師を養成するためのレジデントカリキュラムの作成に資することを目的に, 薬剤師レジデント制度に関して長い歴史を有する米国病院薬剤師会 (ASHP) の専門領域 (がん) の薬剤師レジデントプログラム (PGY2) のカリキュラムをがん領域の専門薬剤師養成のためのレジデントプログラムを実施している国立がん研究センター中央病院 (NCCH) のカリキュラムと比較した. それにより, 薬剤師が特定の専門領域のスペシャリストを目指す場合のレジデントプログラムの課題およびチーム医療に貢献できる能力を備えた薬剤師の養成に必要な事項を明らかにした. その結果, カリキュラムの達成目標の項目には日米で大差はないものの, 米国では, より一貫した考え方に基づきカリキュラムが構築されていることや, 臨床推論を駆使して患者個々の薬物療法を最適化する能力の育成に大きな比重が置かれていることなどがわかった. また, レジデントカリキュラムの改善点をさらに検討するため, NCCHのレジデントと指導薬剤師を対象にアンケート調査を行った. 調査の結果から, 臨床研究に取り組んだ経験に乏しいレジデントには, 医薬品情報の収集・加工能力を養い, 研究能力を強化する研修が必要なことや, レジデントと指導者とで到達目標に対する認識を統一しておく必要があることなどが明らかになった. 以上の課題と改善策は, 高度な専門能力を備えた薬剤師の人材養成に施設や専門領域にかかわらず広く適用が可能ではないかと考えられた.
報告
  • 塚本 桂, 松丸 直樹
    2016 年6 巻2 号 p. 163-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    レギュラトリーサイエンスが担う重要な役割のひとつは, 医療製品のベネフィットとリスクを評価するために科学的な見地を提供することであり, 開発, 承認, または販売のどの過程においても, 様々な利害関係者の意見を一致させるために重要な手法となっている. そのため基礎科学から社会科学に至る広範囲の領域を包括的に対処せねばならず, また, 日進月歩の技術革新にも対応していく必要がある. したがって, レギュラトリーサイエンス研究の進歩は必須であり, また, 教育を介した人材育成も急務である. 本稿では, 欧州と米国におけるレギュラトリーサイエンスの研究と教育に関する最新状況を調査したので報告する. 米国における顕著な変化は, 米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration ; FDA) がレギュラトリーサイエンスと革新のための中核研究拠点Center of Excellence in Regulatory Science and Innovation (CERSI) を, 2014年に西海岸へ拡張したことであった. その背景として, バイオテクノロジーや情報通信技術に関する多くのベンチャー企業が西海岸に位置している地理的な要因が挙げられ, FDAがこれらの企業を医療領域における次の立役者として認識していることによるものである. ヨーロッパでは, 欧州医薬品局 (European Medicines Agency ; EMA) がFDAと異なった方針の基で活動している. すなわち, EMAは共同研究活動には参画するものの, 金銭的なサポートは厳格に除外されている. それよりも, EMAは医療製品の品質, 安全性, 有効性の観点からEU内各国間の規制レベルを同レベルにする教育に注力している. この調査は, 世界2大規制当局が現在レギュラトリーサイエンスの研究と教育をどのように推進しているかを明らかにしたものである. このような諸外国の事例を参考に, 本邦においてもグローバル化に対応しつつ, かつそれぞれの特徴を生かしたレギュラトリーサイエンスの進展と人材育成を促進することが期待されている.
資料
  • 加藤 大和, 松井 利亘, 羽根 由基, 阿部 純子, 上田 夏実, 笹岡 沙也加, 元岡 佑美, 畠平 春奈, 梅津 亮冴, 中村 光浩
    2016 年6 巻2 号 p. 171-183
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    医療用医薬品の価格は, 中央社会保険医療協議会 (中医協) における薬価算定基準に基づき算定されている. 医薬品の薬価算定基準は, 製薬企業の研究開発戦略に影響を及ぼす. 著者らは, 2006年10月27日~2015年8月26日までの中医協資料を調査した. 承認された新薬は792品目であり成分としては483件であった. 類似薬効比較方式 (Ⅰ), 原価計算方式および類似薬効比較方式 (Ⅱ) により算出された新薬はおのおの473件 (59.7%), 192件 (24.2%), および67件 (8.5%) であった. 成分の薬効分類別では, その他の代謝性医薬品, 中枢神経系用薬, 腫瘍用薬, および循環器官用薬は, おのおの82件 (17.0%), 57件 (11.8%), 58件 (12.0%), および36件 (7.5%) であった. 腫瘍用薬の半分以上は原価計算方式に基づき計算されていた. 腫瘍用薬は予測投与患者数が少なく, 算定薬価は高かった. 特に, 外資系企業は内資系企業に比して, 予想投与患者数が少なく算定薬価が高い傾向が明らかとなった. 今回の結果は, 日本での新薬の開発・申請のための基礎資料となると考える.
特集(日本の医療開発の展望)
  • 近藤 達也
    2016 年6 巻2 号 p. 185-186
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
  • 吉田 易範
    2016 年6 巻2 号 p. 187-195
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    2015年4月1日に設立されたAMEDは, 医療分野の研究開発における基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進・成果の円滑な実用化および医療分野の研究開発のための環境の整備を総合的かつ効果的に行うため, 「医療分野研究開発推進計画」に基づき, 医療分野の研究開発およびその環境整備の実施・助成などを行っている. AMEDは, これまで異なる三省に計上されてきた医療分野の研究開発予算を集約し, ワンストップサービスを提供するが, このように研究費申請の窓口や手続きなどが一本化されることにより, 研究者・機関の負担が軽減されることが期待されている. そのほか, AMEDに求められる機能としては, ①新しいプログラムマネジメントシステムを通じた医療分野でのR&Dの実現, ②臨床研究などの基盤整備, ③産業化へ向けた支援, ④国際戦略の推進, などとなっている. 本稿では, 特に9つの連携プロジェクトのひとつである「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」や新しい官民共同研究を中心に, AMEDのこれまでの取組みについて簡単に紹介するとともに, AMEDのミッションを達成するうえでのレギュラトリーサイエンスの重要性についても考察する.
  • 秦 利幸, 伊藤 好美, 小池 恒, 河野 典厚
    2016 年6 巻2 号 p. 197-206
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    政府は医薬品・医療機器産業を我が国の成長産業として位置づけ, 日本医療研究開発機構を平成27年 (2015年) 4月に設置するなど, 医療分野の研究開発にかかわる環境整備を積極的に進めている. また, これまでに長い新薬承認審査期間, いわゆるドラッグ・ラグを克服し, 我が国での医薬品開発等にかかわる予見性向上に大きく寄与している. 創薬型の製薬企業は, 経営資源の新薬開発への集中, 産学連携, グローバル化等への対応を進めており, 我が国の医薬品産業はビジネスモデル転換の途上にある. このように我が国の医薬品開発等を巡る環境は従前に比べ大きく変化し, 政府による医薬品開発等の振興策は, 従来の「周回遅れ」の解消とは異なる対応が可能となった. 先駆け審査指定制度はその1例である. 本稿では, 先駆け審査指定制度について紹介するとともに, その背景となる我が国の研究開発を巡る状況を俯瞰したい.
  • —製薬業界の立場から—
    稲垣 治
    2016 年6 巻2 号 p. 207-214
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    クリニカルイノベーションネットワーク (CIN) は, 2015年に厚生労働省により提案された国立高度専門医療研究センター (NC) と企業との協働スキームである. CINでは各NCは患者レジストリを構築し, 疾患関連情報を収集する. CINの目的は, 疾患レジストリ情報の活用による医薬品開発の促進にある. 製薬企業は各NCとコンソーシアムを作り, 疾患レジストリより得られる情報を自社医薬品の開発に活用することができる. 製薬企業は疾患レジストリが被験者リクルートが促進されること, およびレジストリから得られる情報が試験プロトコールの作成に役立つことを期待し, CINの活動に高い関心を寄せている.
  • 岡田 潔
    2016 年6 巻2 号 p. 215-222
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    わが国は, 革新的な再生医療に対する国家的取り組みを研究推進, 安全確保の両面から行ってきた. 再生医療に関する規制ガイドラインの見直しが行われ, 改正薬事法として医薬品, 医療機器などの品質, 有効性および安全性の確保などに関する法律が2014年11月に施行された. これらの新制度に基づき, 過去に承認された製品, 今回新しく承認された製品や今後承認される可能性のある製品について紹介したい.
シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • 小林 史明
    2016 年6 巻2 号 p. 223-231
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    医師主導治験の制度が我が国に導入されすでに12年が経過した. 承認を取得した医薬品および医療機器もあり, 医師主導治験を導入した成果は着実に得られている. この間, 医師主導治験を実施しやすくするようなGCP改正も行われ, 支援体制や研究費などの周辺環境は大きく変化した. また, 医師, CRC, 実施医療機関を含めた経験も大きく蓄積された. 最近ではアカデミアが創製したシーズの第Ⅰ相試験も実施されるようになり, 医師主導治験は新たな段階に進んでいる. 本稿では, 医師主導治験の発展の経過と今後の話題について述べる.
ICH(医薬品規制調和国際会議)の報告
  • 角 真智子, 井上 学, 友竹 絵美, 橋本 勝弘, 比留間 良一, 藤川 明世, 齋藤 宏暢
    2016 年6 巻2 号 p. 233-242
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル フリー
    ICH (医薬品規制調和国際会議 (旧「日米EU医薬品規制調和国際会議」) ではその活動が始まってから25年の月日が経ち, これまでに日米欧の規制当局と業界団体が協力して, 80以上のガイドラインを公表してきた. 主な成果物としては, 「医薬品の臨床試験の実施の基準」 (E6ガイドライン), 「コモン・テクニカル・ドキュメント」 (M4ガイドライン ; CTD) があり, 医薬品の開発および承認申請手順の国際調和に大きく貢献してきた. そのような状況のなか, 世界規模での医薬品開発を行ううえで, 紙をベースにした運用は, コスト, 効率性, スピードの観点で課題であり, 治験関連資料および薬事文書を電子化して対応する試みは近年ICHの重要な活動のひとつとなってきた. 医薬品開発のライフサイクル (開発から承認後の維持管理まで) の種々の重要な場面での電子化が議論されているが, 当局への文書の提出方法の変更 (ゲートウェイ) や申請資料CTDの電子化 (eCTD) は, 紙ベースでの提出および審査の進め方を大きく変えた. 特にeCTDだけでなく申請電子データ (非臨床試験や臨床試験で得られたデータ) を企業側が提出することにより, 規制当局側は独自の解析を行うことが可能になっていくであろう. これにより審査プロセスの効率化 (照会事項の削減) に加え, 患者様のために, 企業と規制当局がそれぞれ独立してデータを解析することによる医薬品評価の高度化が期待される. 2015年10月のICH協会設立に伴い, ICH活動の対象は日米欧だけでなく世界全体となり, 市販後や後発品も対象となった. 今後, それぞれの国の医薬品情報を, 日米欧を含む世界の各国に電子文書として提出することが可能になれば, 世界の患者様へ貢献できるようになることが期待される. そのためには, 医薬品情報の取り扱いに関する国際規定を詳細に決めていく必要がある. その推進基盤としてICH活動における電子化トピックスは一層重要性が増すであろう. また, 日本製薬工業協会 (JPMA) は今後もICH創始団体の一角として, 電子化トピックスをはじめとした最先端のICH規制を速やかに国内に取り入れていくこととともに特にアジア地域への普及に取り組むことを予定している.
ミーティング速報
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