2018 年 8 巻 2 号 p. 69-81
Japanese Adverse Drug Event Report Database (JADER) を用いて, 高齢心房細動患者を対象に, 直接作用型経口抗凝固薬使用時における間質性肺疾患, 脳出血, 消化管出血の副作用発現傾向の検討を行った. 副作用ごとの発現傾向を年齢, 薬剤, 投与量にて比較した. 投与開始時からの副作用発現日数の中央値は, 間質性肺疾患で40~124日, 消化管出血では60.5~91日であり, 年齢, 薬剤治療の比較で, 明らかな相違は認められなかった. 脳出血発現の中央値は, 124.5~331.5日であり, 消化管出血発現より遅い傾向にあった. 特にfactor Xa inhibitor (FXA) の高用量治療80歳以上での脳出血発現の中央値は331.5日で, FXAの低用量治療80歳以上の143日や, FXAの高用量治療80歳未満の175日よりも遅かった. FXAの高用量治療80歳以上での脳出血の副作用発現は, 半数が1年以上の投与で発現しており, 投与初期だけではなく投与期間中の長期にわたり高血圧症などの合併症管理, 脳出血の副作用発現兆候に留意する必要があることが示唆された. JEDARによる解析では, 治験の際にはデータが得られにくい80歳以上の高齢者における実臨床使用での副作用発現傾向を把握することが可能であった. さらに各副作用の発現時期が異なることが示唆され, 発現傾向を把握することで, 実臨床における副作用の迅速で適切な対応に寄与すると考えられる.