レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(ICH(E18)ゲノム試料の収集およびゲノムデータの取扱いに関するガイドライン)
日本人を主対象とした 「医薬品の非臨床及び臨床第Ⅰ相試験における遺伝子多型評価のための科学的情報」 の取りまとめと今後の展望
平塚 真弘平澤 典保大島 吉輝児玉 進宮田 敏男段 孝高徳 敬之栗林 秀明中村 亮介斎藤 嘉朗
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2019 年 9 巻 2 号 p. 95-102

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抄録

2012年から5カ年にわたり, 厚生労働省の 「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」 が行われた. 東北大学大学院薬学研究科では, 本事業において, 「ゲノム薬理学, バイオマーカーを用いた医薬品の有効性・安全性に関する評価方法」 として採択され, 国立医薬品食品衛生研究所 (NIHS) および独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) との連携のもと, 医薬品候補化合物の非臨床および早期臨床試験を行い, その過程で主として関与する薬物代謝酵素およびトランスポーターの遺伝子多型影響の評価を行ってきた. その中で, 連携各機関の協力を得て, 主として日本人を対象に, 医薬品の非臨床および臨床第Ⅰ相試験における遺伝子多型評価のための科学的情報をとりまとめた. この留意事項文書は, 広く文献調査も行って知見を集積し, 低分子化学医薬品の体内代謝および体内分布に関与するシトクロムP450酵素およびその他の薬物代謝酵素の分子種, ならびに薬物トランスポーター分子種の遺伝子多型が, これら分子種の機能的変化と関連すること, さらに日本人で頻度1%以上である遺伝子多型について, その種類とin vitroでの被験薬の機能影響評価の方法などの概要を述べたものである. また有効性や安全性にかかわる薬効・副作用関連分子の遺伝子多型・変異についても例としてあげている. 薬物代謝酵素やトランスポーターなどの遺伝子多型評価の必要性に関しては, 今後の研究の進展, 国内外で行われている医薬品開発や欧米における指針など, 最新の知見と国際的な動向をふまえて, 継続的に議論を続けていくことが必要であると考えている. 本稿では, この成果物の概要を中心に, 関連する欧米などの指針を含めて紹介する.

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© 2019 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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