レギュラトリーサイエンス学会誌
Online ISSN : 2189-0447
Print ISSN : 2185-7113
ISSN-L : 2185-7113
原著
2013年度から2017年度に承認された新医療用医薬品の治験のGCP遵守状況とわが国へのFDAのGCP査察について
和田 一葉西村 (鈴木) 多美子
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 9 巻 3 号 p. 151-163

詳細
抄録

臨床試験の実施の基準 (GCP) は医薬品規制調和国際会議で調和されたガイドラインである. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA) の信頼性保証部は, 医薬品GCP実地調査と新医薬品承認申請資料適合性書面調査をわが国で行っている. この2つのタイプの査察は原資料 (診療録, 検査伝票, 患者日誌など) から申請資料までの信頼性を保証するために重要である. 私たちは, 2013〜2017年度まで薬事・食品衛生審議会で審議された新医療用医薬品の審査報告書を用いてGCPへの適合性を調査した. 一部の医療機関で不適切な案件が発見された新医療用医薬品が4件あり, PMDAは申請者にこれらのケースを承認申請書から削除するよう求めた. その頻度は3%以下であった. 修正された承認申請資料は, PMDAの審査に受け入れられる. 治験に関するすべての情報は, 正確な報告, 解釈および検証が可能なように記録し, 取扱い, および保存することとされているが, 3品目の治験を行ったいくつかの治験実施施設では, 診療録がみつけられなかった. 一方, 新医薬品承認申請資料適合性書面調査では, 自主的な改善を求める事項の頻度が増加しており, 2017年度には12.7%であった. 私たちは, 2013〜2017年のわが国におけるCDERのバイオリサーチモニタリングの件数も調査したところ, 自主的改善を求められた治験責任医師は2名であった. わが国の治験の環境は改善しているが, データの信頼性やデータの統一性を計るさらなる努力が求められると考える.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top