環境中にはダイオキシン,PCBなどの健康に障害を与える化学物質が放出されており,社会問題となっている.このような化学物質に加えて,いままでは安全と考えられ,環境中に放出されていた,農薬,界面活性剤,プラスチックの原材料などの化学物質の中に,生体のホルモン受容体,特に女性ホルモン受容体に結合することにより,あたかも女性ホルモンと同じような働きをする化学物質(環境ホルモン,内分泌擬乱化学物質)があることがわかってきた.環境中に放出されてホルモン様の作用を示すことから,このような化学物質を「環境ホルモン」と呼ぶことにする.ヒトの精子数がこの50年間で半減しているとの報告もあり,環境ホルモンが原因になっている疑いもある.また,ダイオキシン,PCBなどは生物濃縮により,食物連鎖の上位の動物である,ヒトのみならずイルカ,クジラ,アザラシなどの皮下脂肪に蓄積されている.環境ホルモンは,水系に入り水棲動物の生殖を概乱する懸念がある.日本の沿岸では有機スズによる巻貝の性の異常が見られている.環境ホルモンとはなにか,なにが問題なのか,どのような影響が出ているかについて総説する.