電気・電子・プログラマブル電子安全関連系(SRS) の機能安全に関する国際規格IEC 61508 が発効され,当該規格を翻訳してJIS C 0508 が制定された.本規格では,SRS のリスク軽減能力を推定することが要求事項となっている.このSRS の自己診断機能はそれがない場合に比べて危険事象の生起を無視できる程度にまで軽減すると思われがちである.しかし,低頻度作動要求モードにおいてSRS の保全中に作動要求が発生する場合や,高頻度/連続作動要求モードにおいて作動要求中にSRS が故障する場合を考えると,自己診断により発見できるフォールトが必ずしも平均危険事象率に寄与しないとは言えない.本研究では,作動要求が非定常となり,SRS およびそれが対象とする機器等から構成される全体システムについて,SRS のフォールトに対して自己診断がある場合の危険事象過程を,マルコフ過程を用いてモデル化し,平均危険事象率推定式の導出を行った.また,数値計算により,得られた推定式が平均危険事象率を最大に見積もる推定式であるものの,それを最小に見積もる場合との差はSIL が一段階変化する幅に比べて十分に小さい値であることを明らかにし,得られた推定式が規格への適用に十分であることがわかった.さらに,得られた推定式から九 つの作動要求モードと簡易な平均危険事象率の推定式を示した.