2014 年 53 巻 2 号 p. 94-99
「南海トラフ巨大地震」や「首都直下地震」の経済被害額が次々に公表されている.政府は被害想定に基づき各種の対策を講じることとなるが,経済被害額が意味することは広く社会で共有されているとは言いがたい.経済被害額そのものに目を奪われるのではなく,その推計方法の背後にある考え方や仮定もしくは限界を知ることが,経済被害を正しく解釈する上で重要であり,これにより政府の経済被害対策等を適切に評価することができる.本稿では被害想定における経済被害額をいかに解釈すべきかについて,東日本大震災で生じた経済被害を事例に挙げつつ論じる.その過程で災害の経済被害をストックとフローの概念を用いて整理し,経済被害は,災害の影響をより包括的に捉えるフローの価値で評価すべき事を説明 する.最後に経済被害の定義と推計手法に関わる今後の研究課題について説明する.