2014 年 53 巻 4 号 p. 234-243
冷凍空調機の冷媒などの用途に広く使用されてきたハイドロフルオロカーボン(HFC)は温室効果が極めて高いため,京都議定書において将来に向けて段階的削減が義務づけられている.これに伴い,温室効果の低い冷媒の実用化へ向けた研究開発が待たれているが,それらの候補となる物質はその大半が可燃性を有し,普及に際しての大きな障害となっている.特に,換気の乏しい居住空間での漏洩拡散と着火等による安全性への懸念については早急に解決されなければならない.本稿では,モントリオール議定書や京都議定書に関連した冷媒の転換の経緯を振り返りつつ,可燃性冷媒の導入の必然性について紹介する.可燃性冷媒の漏洩に対する安全性の評価に資するべく,気体の漏洩に対する数値予測モデルを構築し,そのモデルと数値流体力学手法を組み合わせて漏洩濃度の時間発展を推定する.最終的には,可燃性気体漏洩に対する安全性評価のための基礎的知見を得るための漏洩解析手法の一つとして,本解析手法を提案する.