近年のガス切断等に関する労働災害の頻発を受け,労働安全衛生総合研究所では災害情報の収集とともに,現場のガス切断器具等の実態調査と回収調査を行った.本研究は,(一社)日本溶接協会の協力で行ったもので,回収したガス溶断器の火口を取り外した吹管について,逆火に及ぼす劣化・不具合をまとめたものである.吹管は32 事業所からアセチレン用31 本,LPG 用43 本を回収した.使用年数は2 ~18 年である.回収調査票を分析し,吹管の外観試験,気密試験,分解試験を行った.分解試験では,吹管を分解・切断し,バルブとすすの付着の状況を調べた. 測定の結果,吹管の切断酸素管と混合ガス管が曲がったものがあったこと,不具合として漏れが多かったこと,漏れは混合ガス管と混合管の接続部が多かったことなどがわかった. 吹管の約4 割のバルブに閉そく不良が見られた. 予熱酸素バルブの弁体と弁座に摩耗や損傷が見られ,このことで閉そく不良となり,逆火が生じる原因の一つと考えられた.気密試験で漏れはないが逆火したものが多く,吹管から燃料ガスホースに逆火したものもあった.測定結果から,事故の防止策を述べた.