政府による規制(規制行政)は,科学技術の安全確保の成否のカギをにぎるが,エンジニアにはわかりにくい.事故の法には,事故が起きないようにする規制の法と,事故が起きてからの損害賠償の法とがある.損害賠償の法は早くから発展したが,規制法は後れた.規制法は制定されるが,それを解釈し実施に移すところの法学が,空白だった.空白が続いた原因は,法学が専門別に分化していること,法学が研究資源の多くを裁判の判例に依存すること,などがある.近年ようやく,判例に代わり,社会観察にもとづく研究によって,根本的な解明が進んでいる.本稿は,その延長上で,安全確保の規制行政の枠組みを明らかにする.合理的な規制行政の観点から取り組むべき課題は,多様であり,無限といってよいほどの広がりがあり,その一つに,法教育のあり方がある.