福島原子力事故は , 設備や手順の破綻のみならず , 極限状況下における情報の生成・伝達・統合の脆弱 性を浮き彫りにした . 本稿は , 高信頼性組織論に基づく既存評価を再検討し , 東京電力および政府の情報 連携と意思決定の実態を制度と実運用の乖離という観点から分析する . 分析の結果 , 東京電力は法令遵 守 , オペレーション重視 , 専門知識に立脚した情報連携を継続していた一方 , オフサイトセンターの機能 不全や官邸の直接介入などにより , 制度的に想定された情報統合メカニズムが崩壊していたことが明らか となった . 安全性は , あらかじめ設計された手順だけでなく , 想定が崩れた瞬間に情報を結び直す組織能 力によって試される . 本研究は , 安全工学における安全概念を情報連携の視点から拡張するものである .