抄録
サゴヤシ デンプン抽出残渣の熱可塑化と反応の低エネルギー化を目的とし,サゴヤシデンプン抽出残渣の常温でのラウロイル化を試みた.また,ラウロイル化サゴ残渣からプラスチックシートを調製し, その性質を調べた.本実験で用いた反応系において,常温でのラウロイル化反応は可能であり, プラスチック化に十分なエステル化度が得られた.プラスチックシートはラウロイル化サゴ残渣から容易に 製造でき,各種溶媒に可溶であり,特にアルカリ(1N水酸化ナトリウム水溶液)への溶解性は著しく高かった.土壌環境中で分解を試みた結果,試験開始から20日間で著しく質量減少した.カワラタケ およびオオウズラタケによる分解性試験でも質量減少が生じ,生分解性であることが示された. リパーゼ,α-アミラーゼおよびセルラーゼによる酵素的分解を試み,その溶液の化学的酸素要求量(COD)で分解性を評価した.その結果すべての酵素でCODは増加し,ラウロイル化サゴ残渣はエステル結合の分解とセルロース,デンプンの主鎖の分解が起こりうることが明らかになった.上記の結果から エステル化反応のエネルギーの低減化とサゴ残渣からの生分解性プラスチックの製造が可能 であることが明らかとなった.