抄録
今日,石油由来のプラスチックが自然環境下で蓄積され,生態系に多くの影響を与えることが問題として指摘されてきており,環境中を循環する生分解性プラスチックの開発が望まれている.一方,サゴヤシは,その髄中に多量のデンプンを蓄積することから,食糧資源として東南アジアを中心として栽培されてきているが,その成分的特性から生分解性プラスチックの原材料として利用されうることが期待できる.また,サゴヤシからデンプンを抽出した後の残渣は現在,そのほとんどが利用されずに廃棄されており,その利用法の確立が必要とされている,本研究では上記の背景を踏まえ,サゴヤシ材に化学修飾により熱可塑性を付与することを目的とした.
サゴヤシ材を新たな木質資源として用いるために,成分分析を行った.その成分組成は生育土壌に影響を受け,特に,主成分であるデンプンの含有量が大きく異なっていた.また,アセチル化によって熱可塑性を付与することを試み,熱圧締によりシートを試作し,その熱可塑性の評価を行った.さらに,シートの熱的挙動を熱重量分析および熱機械分析により明らかにした.
実験の結果,本研究で用いられたアセチル化法においては,デンプン含有量の少ない方が,多いものに比ベエステル含有率が高くなる傾向にあった.また,熱圧締により作製されたシートからは,180℃付近で最もよく熱可塑化が起きているのが明らかになった.シートの熱軟化曲線からは,泥炭土壌で生育したサゴヤシ材から調製されたシートにおいて150℃付近に熱軟化点が見られた.本研究の結果から,サゴヤシ材へ熱可塑性を付与することができ,生分解性プラスチックの原材料として用いることが可能であることが示唆された.