Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
5 巻, 1 号
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研究・調査報告
  • ―マレーシア,サラワク州での例—
    山口 千尋, 岡崎 正規, 金子 隆之, 米林 甲陽, Hassan Abdul Halim
    1997 年5 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     東南アジアに分布する熱帯泥炭土壌はその大部分が貧栄養,もしくは中程度の栄養状態である.マレーシア,サラワク州ではサゴヤシは主要な自給作物として栽培されてきた.サゴヤシは多年生の澱粉作物で泥炭土壌で栽培できる作物として経済的な重要性が増してきている.しかしながら,サゴヤシは生育立地によって生長が異なり,厚い泥炭層を持つ土壊に生育したサゴヤシは収穫に至る年数が,薄い泥炭層を持つ土壌,沖積土壌に生育するサゴヤシより長いという問題点を抱えている.本研究では泥炭層の厚さの異なる土壌におけるサゴヤシの生育について報告する.マレーシア,サラワク州,ダラット地区において,泥炭層の厚さの異なる2地点を設定し,1992年から4年間,樹齢の異なるサゴヤシの生育調査を行った.
     厚い泥炭に生育するサゴヤシが,ロゼット状態の生育から幹立ちして幹を形成するようになるまでの期間は供試木によって大きく異なり,サッカー移植後5,6年を要した.幹形成後1,2年の幹の伸長速度は著しく,その後,ゆるやかになった(94-127cmyr-1).出葉数も毎年異なったが,幹が形成されて3,4年は年間17.0から19.2枚(7 年生で最大値19.2),その後は12.0枚であった.幹が形成される期間を全出葉数から7-9年,様の期間を5-6年とすると,厚い泥炭層を有する土壌に生育するサゴヤシの成熟に至るまでの期間は12-15年と見積もられた.
     一方,薄い泥炭層を有する土壌に生育するサゴヤシの伸長速度は150-200cmyr-1であり,5年生で既に幹が形成されていた.その後の出葉速度は13.4-15.5であり,樹齢による顕著な差は見られなかったが,薄い泥炭層のサゴヤシは,厚い泥炭層のサゴヤシに比べ葉柄が長く,展開葉も多く,樹冠も発達していた.このように,厚い泥炭層に生育するサゴヤシは成熟に至るまでの期間が長く年間の単位面積あたりの澱粉生産量は低くなる.しかし,サゴヤシは泥炭土壌地域で大規模な排水を必要とせずに栽培できる唯一の作物であり,この地域の澱粉生産にとって重要な植物である.
     泥炭土壌地域におけるサゴヤシをさらに有効に資源化するには,優良品種の選抜と育種育苗(成熟に至るまでの期間の短縮),および合理的な栽培,管理が必要である.
  • 渡辺 尊子, 近江 正陽
    1997 年5 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 1997年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     今日,石油由来のプラスチックが自然環境下で蓄積され,生態系に多くの影響を与えることが問題として指摘されてきており,環境中を循環する生分解性プラスチックの開発が望まれている.一方,サゴヤシは,その髄中に多量のデンプンを蓄積することから,食糧資源として東南アジアを中心として栽培されてきているが,その成分的特性から生分解性プラスチックの原材料として利用されうることが期待できる.また,サゴヤシからデンプンを抽出した後の残渣は現在,そのほとんどが利用されずに廃棄されており,その利用法の確立が必要とされている,本研究では上記の背景を踏まえ,サゴヤシ材に化学修飾により熱可塑性を付与することを目的とした.
     サゴヤシ材を新たな木質資源として用いるために,成分分析を行った.その成分組成は生育土壌に影響を受け,特に,主成分であるデンプンの含有量が大きく異なっていた.また,アセチル化によって熱可塑性を付与することを試み,熱圧締によりシートを試作し,その熱可塑性の評価を行った.さらに,シートの熱的挙動を熱重量分析および熱機械分析により明らかにした.
     実験の結果,本研究で用いられたアセチル化法においては,デンプン含有量の少ない方が,多いものに比ベエステル含有率が高くなる傾向にあった.また,熱圧締により作製されたシートからは,180℃付近で最もよく熱可塑化が起きているのが明らかになった.シートの熱軟化曲線からは,泥炭土壌で生育したサゴヤシ材から調製されたシートにおいて150℃付近に熱軟化点が見られた.本研究の結果から,サゴヤシ材へ熱可塑性を付与することができ,生分解性プラスチックの原材料として用いることが可能であることが示唆された.
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