産業衛生学雑誌
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調査報告
職場における健康づくり支援環境評価に関する調査研究
李 廷秀川久保 清川村 勇人
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2003 年 45 巻 2 号 p. 57-66

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抄録

職場の健康づくりにおいては, 個々人を対象とした健康づくりより, 個人を取り巻く職場環境への組織的アプローチの重要性が注目されている. しかし, 職場の健康づくり支援環境を評価した研究は少ない. 本研究では, 職場における健康づくり支援環境の実態を調査することにより, 従業員の健康づくりに取り組む職場が整備すべき諸条件を明らかにすることを目的とした. 全国の事業場450カ所の産業医に対して質問紙を郵送調査した. 質問紙は182項目からなり身体活動 · 運動, 栄養 · 食生活, ストレス, たばこ, 健康診断, 組織的支援の6つの領域からなる. 有効回答数は142(32.7%)で, 従業員規模はすべてが300人以上, 71.1%は製造業であった. 最も実施割合が高かったのは健康診断領域(72.5%), 次いでストレス領域(45.9%)であった. 実施割合が最も低かったのは喫煙対策領域(22.0%)であった. 健康づくり関連施設としてはストレス相談場所(97.9%), 社員食堂(91.6%), 運動施設(67.6%), 休憩場所(78.9%)が比較的多かった. しかし, 施設の利用を勧める方策を実施している事業場は少なかった. 健康教育として最も多く実施していたのは運動プログラム(63.6%)であった. しかし健康的な食事は45.8%, 体重管理プログラム35.9%とその実施率は比較的低かった. 従業員規模別では6領域全ての平均実施割合とストレス領域での平均実施割合に有意差がみられ, 規模が大きいほど実施割合が高い結果であった. 業種間では6領域全ての運動領域において有意差がみられ, 製造業においてその実施割合が高かった. 本研究により, 従業員の健康づくりに取り組む職場が整備すべき諸条件が明らかになった.

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© 2003 公益社団法人 日本産業衛生学会
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