産業衛生学雑誌
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調査報告
新型コロナウイルス感染症流行下におけるオンラインでの産業保健面談の経験,満足度および課題:労働者を対象とした横断調査
小川 明夏友永 遥佐々木 那津黒田 玲子津野 香奈美今村 幸太郎川上 憲人
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2022 年 64 巻 6 号 p. 345-353

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抄録

目的:新型コロナウイルス感染症流行によりオンラインによる産業保健面談が増加した.その経験,満足度および課題を明らかにするため,労働者を対象として新型コロナウイルス感染症流行開始から1年間のオンライン面談の経験について調査した.対象と方法:雇用されている常勤の労働者を対象としたオンライン・パネル調査(E-COCO-J: The Employee Cohort Study in the COVID-19 pandemic in Japan新型コロナウイルス感染症に関わる全国労働者オンライン調査)の参加者に,2021年3月にインターネット調査を実施した.過去1年間のオンラインおよび対面での産業保健専門職による各種の面談の有無,満足度,並びにオンライン面談の課題について回答を得た.結果:調査への回答者1,153人のうち,無職あるいは休業中の者を除く1,102人を解析対象とした.過去1年間にオンライン面談の経験のあった者は50人であり,対面での面談の経験のあった者は57人であった.健康一般についての相談,健康診断の事後措置や保健指導,その他の目的で行ったオンライン面談において,オンライン面談経験者の7割以上が満足したと回答した.一方,長時間労働者の医師面接,休職や復職についてのオンライン面談においては,満足したと回答した者は4割以下だった.オンライン面談を経験した回答者のうち3割以上が,オンライン面談の課題として,労働者の意向との乖離「オンライン面談でなく対面で面談したかった」),コミュニケーションの質の問題(「十分相談できた気がしなかった」など),秘密保護への懸念(「第3者に会話が聞かれているのではと心配だった」など)を報告していた.考察と結論:オンラインでの長時間労働者の医師面接,休職や復職についての面談の満足度は低く,オンライン面談では,労働者が対面面談を希望していたこと,コミュニケーションの質の問題,面談の秘密保持への懸念があることが明らかになった.このことから,産業保健のオンライン面談では,その面談の種別を含めて適否を考慮し,産業保健専門職が面談の質を低下させないような配慮・工夫をする必要があることが示唆された.

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© 2022 公益社団法人 日本産業衛生学会
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