抄録
材料へ塩化マグネシウム(MgCl2)を添加することにより,struvite(リン酸マグネシウムアンモニウム;MgNH4PO4・ 6H2O)の生成を促進させて堆肥化早期のアンモニア揮散を低減する方法を評価するために,肥育牛排せつ物を材料として小型反応槽を用いた15日間の堆肥化実験により検討を行った。MgCl2 添加により初期材料のpHの低下とECの上昇が生じ,その添加量が排せつ物乾燥質量当たり0.4 mol(mol kgDM-1)のときの有機物分解率は,無添加である対照区の63%にとどまった。無添加に対する添加区のstruvite-N増加量は,実験終了時において材料初期乾燥質量当たり0.03 mol kgDM-1(MgCl2 添加: 0.1 mol kgDM0-1)~0.07 mol kgDM-1(MgCl2 添加:0.4 mol kgDM0-1)であり,添加したMgCl2 がstruvite-N生成に利用された割合は34~16%と計算された。このため,MgCl2 添加が0.4 mol kgDM-1 のときのアンモニア揮散は対照区の70%に抑制されたが,struvite-N生成による抑制効果よりも材料pHの低下による抑制効果が大きかったものと考えられる。