日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
Print ISSN : 0387-5253
ISSN-L : 0387-5253
報文
ケラチンフィルムを用いた毛髪タンパク質の光劣化に関する新規定量法の開発
川副 智行渡辺 智子藤井 敏弘
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 45 巻 2 号 p. 100-107

詳細
抄録
以前のわれわれの研究で,フルオレセイン5チオセミカルバジド (5-FTSC) と蛍光顕微鏡を用いた光曝露による毛髪構成タンパク質のカルボニル化を検出する手法を開発した。本研究では,ケラチンとケラチン関連タンパク質 (KAPs) からなる毛髪ケラチンフィルムを毛髪の代わりに用いて実験を実施した。数種のケラチンフィルムを用いて光照射による蛍光強度を確認した結果,プレ─キャスト法で作製したフィルムが,最もカルボニル化タンパク質の生成を検出できることがわかった。このフィルムでは,光曝露時間に比例した蛍光強度の増加が確認され,高い相関係数 (R2 = 0.97) が得られた。また,わずか10分の光曝露照射でも差を検出可能で,毛髪に比べ約6倍の感度を示す結果となった。さらに,UVAとUVB曝露による影響も感度よく検出可能であった。イムノブロット解析では,120分の光曝露でタンパク質の酸化が確認されたが,蛍光顕微鏡による結果に比べて短時間の光照射では変化を確認できなかった。また,ケラチンフィルムを用いたFTIRによる分析では,240分の光曝露によるシステイン酸の生成が検出可能であったが,カルボニルの検出はできなかった。
著者関連情報
© 2011 日本化粧品技術者会
前の記事 次の記事
feedback
Top