抄録
NMFは保湿に必須の因子として知られていたが,長い間その産生機構は不明のままであった。われわれはフィラグリン・ペプチドからNMFを産生する酵素としてブレオマイシン水解酵素 (BH) を同定した。また,NMF産生経路の上流酵素であるカスパーゼ-14によるフィラグリン・モノマーからのペプチド遊離についても明らかにした。ヒト試験の結果,BHの活性と遊離アミノ酸量,経皮水分蒸散量 (TEWL) の間には相関があることが示された。BHの活性は老化した皮膚では低下していることが示された。アトピー性皮膚炎においては,皮疹部のみならず,無疹部においてもBHが極度に低下していることから,フィラグリン遺伝子異常ばかりではなく,NMF産生にいたる分解系の異常もバリアー機能に大きな影響を与えることが示唆された。