2021 年 55 巻 2 号 p. 142-151
アイメイク製品は目元に彩りを与え,対人印象の向上に寄与する。そのため幅広い世代にとって重要なアイテムといえるが,40代以降の日本人女性の間では使用性への不満が増加する。この不満を解消するためには加齢による使用性の変化を正しく評価する必要がある。しかし,従来のアイメイク製品の使用性評価は人瞼での主観評価が中心とされ,加齢と個人差の影響を分離することが困難であった。また客観評価として既存の人工皮膚を用いる方法は,瞼の物性やその加齢変化を十分に再現できておらず,評価精度が不十分であった。そこで本研究では,各年代の瞼の物性を反映した年代別擬似瞼モデルを作製することで使用性評価精度の向上を図った。擬似瞼モデルの開発は人瞼の触感およびアイメイク製品の塗布時の動きを反映することが重要と考え,それぞれ瞼の皮膚構造と眼輪筋の解剖学的構造に着目し再現した。20代および50代を反映していた擬似瞼モデルを用いてアイメイク製品の使用性評価を行い,対応する年代の人瞼と同様の塗布状態が再現できることを確認した。さらに加齢に伴う瞼の物性変化によりアイメイク製品の使用性が大きく低下することを定量的に示した。