日本化粧品技術者会誌
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55 巻, 2 号
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総説
原著
  • 林原 千恵子, 真間 雄一, 川口 大地, 萩原 摩里, 遠野 弘美, 庵地 輝, 簗瀬 香織
    2021 年 55 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    肌は成長過程で紫外線やホルモンバランスの変化など多くの外的,内的要因を受け,変化していく。特に成長段階にある子供の肌は,角層構造の成熟,皮脂腺の発達など変化が大きく,測定時の年齢によって肌性状を示す各種パラメーターの値は異なることがしられている。今日まで大人と子供の肌性状について研究,比較されているが,頭皮の報告は少ない。また,近年菌叢の重要性が多くの分野で報告されバランスや多様性について議論が行われているが,肌性状もまた皮膚常在菌と深く関わっている。そこで,本研究では頭皮に着目して女児と母親の頭皮の肌性状と菌叢を測定し,解析を行った。その結果,同様の環境下で生活する親子であっても菌叢を含めた頭皮環境は異なることがわかった。頭皮性状では女児は母親に比べて皮脂量,pHが有意に低く,発汗量が有意に高く,水分量が高い傾向にあった。さらに女児の頭皮菌叢は母親とは異なり,多種類の菌が存在した。また,菌叢解析結果を用いて主成分分析を行ったところ,女児ではStreptococcus属が,母親ではCutibacterium属が高い寄与率を示し,それぞれ異なる菌が頭皮菌叢バランスに寄与することが示唆された。

  • 渡邉 梨奈, 萩野 亮, 今出 楓子, 森 洋輔, 奥山 雅樹
    2021 年 55 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    アイメイク製品は目元に彩りを与え,対人印象の向上に寄与する。そのため幅広い世代にとって重要なアイテムといえるが,40代以降の日本人女性の間では使用性への不満が増加する。この不満を解消するためには加齢による使用性の変化を正しく評価する必要がある。しかし,従来のアイメイク製品の使用性評価は人瞼での主観評価が中心とされ,加齢と個人差の影響を分離することが困難であった。また客観評価として既存の人工皮膚を用いる方法は,瞼の物性やその加齢変化を十分に再現できておらず,評価精度が不十分であった。そこで本研究では,各年代の瞼の物性を反映した年代別擬似瞼モデルを作製することで使用性評価精度の向上を図った。擬似瞼モデルの開発は人瞼の触感およびアイメイク製品の塗布時の動きを反映することが重要と考え,それぞれ瞼の皮膚構造と眼輪筋の解剖学的構造に着目し再現した。20代および50代を反映していた擬似瞼モデルを用いてアイメイク製品の使用性評価を行い,対応する年代の人瞼と同様の塗布状態が再現できることを確認した。さらに加齢に伴う瞼の物性変化によりアイメイク製品の使用性が大きく低下することを定量的に示した。

  • 戸田 和成, 佐藤 千怜, 平山 貴寛, 萬成 哲也, 大石 竜之, 西川 啓太, 伊東 正純, 中嶋 礼子, 細川 博史, 大西 日出男
    2021 年 55 巻 2 号 p. 152-161
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    理美容師にとってシャンプー施術は,理美容室における繁用技術の1つである。そこでわれわれは従来のように「擦る」ように手指を動かすシャンプー技術とは異なり,「揉む」ように手指を動かすことが特徴である新たなシャンプー技術を開発した。本研究の目的は,揉み洗いと擦り洗いそれぞれのシャンプー技術で施術した際に,施術前後で施術者および被施術者の心身に及ぼす影響を,各種心理的・生理的指標によって検討することである。本研究では,シャンプー施術者を対象とした実験と,シャンプー被施術者を対象とした実験を別々に行った。その結果,シャンプー施術者に対しては,擦り洗いでVisual Analogue Scale(VAS)による疲労感の増加,腕部の筋硬度上昇,心拍数の上昇および前額部や鼻尖部の皮膚表面温度の上昇がみられたが,揉み洗いでは変化量に有意な差が認められなかった。またシャンプー被施術者に対しては,揉み洗いで唾液中分泌型免疫グロブリンA(sIgA)濃度の上昇や収縮期血圧の低下,脈拍数の低下がみられた。これらの結果より,揉み洗うシャンプー技術は,施術者の作業負担を軽減し,さらには被施術者の快適性も向上させる,両者にとって有益なシャンプー技術であることを明らかにした。

  • 伊澤 直樹, 柴田 慎也, 山口 るみ, 花水 智子, 曽根 俊郎, 伊藤 雅彦
    2021 年 55 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    香りの生理効果としてストレス抑制効果が注目されている。本研究では香りを有する発酵化粧品原料のストレス抑制効果を生理的・心理的測定により検証した。香りを有する化粧品原料には,既存の化粧品原料であるホエイを培地として酵母(Wickerhamomyces pijperi)を培養した新規発酵液を用いた。この発酵液は8種類の香気成分を含み,フルーツ様の香りを呈していた。28名の健康なボランティアに計算ストレス(内田クレペリンテスト)を負荷し,その後安静にさせ,ストレス期と安静期の生理的および心理的ストレス指標の変化を調べた。香りは内田クレペリンテストの前中後の3回嗅がせた。生理的指標として心拍間隔変動,手掌発汗および唾液ストレスマーカーを測定した。また,被験者の気分を気分プロフィール検査(POMS)および2次元ビジュアルアナログスケール法で測定し,心理的指標とした。水を対照として比較したところ,この発酵液の香りを嗅いだ群は,ストレス負荷による手掌発汗の上昇および気分プロフィール検査における混乱─当惑スコアの上昇が有意に抑制されていた。以上の結果より,本発酵液の香りにストレスを抑制する効果のあることが,生理的・心理的パラメータの両面から示された。

  • 松江 由香子, 森川 稔之, 下瀬川 紘, 礒辺 真人, 藤田 博也
    2021 年 55 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    アミノ酸系界面活性剤はシャンプーに広く使用されているが,アミノ酸系界面活性剤を主洗浄剤として理想的な泡量と弾力性を備えるシャンプーを開発することは容易ではない。この欠点を克服するため,われわれはヒドロキシ(OH)基を有するN-アシル-N-(2-ヒドロキシエチル)-β-アラニンアミノ酸系界面活性剤(HEA)を新たに合成した。基本特性と水溶液中の配向性を調査したところHEAは独特の界面挙動を示した。この挙動はOH基との水素結合によって影響を受けた結果生じたものと考えられるため,OH基を含まないN-アシル-N-メチル-β-アラニンアミノ酸系界面活性剤(LMA)と比較して,NMR(核磁気共鳴)で調べた。1 mmol/LのNOESY(核オーバーハウザー効果(NOE)を利用したNMR)によると,OH基をもつHEAはラウロイル基,およびヒドロキシエチル基の相関を示すピークを示したが,OH基をもたないLMAは相関するピークを示さなかった。この結果から,HEAのOH基が水素結合を形成することが示された。HEAは,配向した単分子膜からなる泡膜中においてもこの水素結合を形成すると考えられる。泡性能を評価した結果,HEAはLMAと比較して泡量,細かな泡サイズとその維持能力,および泡弾力に優れる特性を示した。そして,このHEAを配合したシャンプーは,優れた泡性能を有することがわかった。

短報
  • 段 中瑞, 横田 真理子, 枝 雄二
    2021 年 55 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    これまでの研究では,異なる菌種の腸内細菌に対するグルカンオリゴサッカリド(GOS)の選択的な生育促進と阻害作用が確認されている。その選択的な効果は皮膚常在菌叢の改善への応用も期待される。本研究では,GOSの一種であるα-GOSの皮膚常在菌叢に対する臨床作用を検証するために,α-GOS配合ゲルを2週間連用し,次世代シーケンサによるメタゲノム解析を用いて,採取する皮膚常在菌叢を分析した。その結果,皮膚常在菌叢の多様性の指標とするシンプソンインデックス(SI)が低い2名の被験者において,α-GOSの使用でSIが改善された。また,α-GOSの使用で善玉菌Staphylococcus epidermidisの存在比率の増加,日和見菌Cutibacterium acnesの存在比率が最適値への改善,および悪玉菌Staphylococcus aureusの存在比率の減少効果が示唆された。これらの結果より,α-GOSは皮膚常在菌のバランスや多様性を改善することが示唆され,皮膚常在菌叢を制御する作用が期待できる。

  • 辻 礼奈, 羽田 容介, 岩野 英生, 澤木 茂豊
    2021 年 55 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/23
    ジャーナル フリー

    プロテアソーム活性は加齢とともに低下する。プロテアソーム活性を阻害すると,正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン合成,ヒアルロン酸合成酵素,エラスチンの遺伝子発現が低下することが明らかとなった。この結果は,プロテアソームが細胞外マトリックス(ECM)成分の維持に重要な役割を担っていることおよびプロテアソーム活性の低下は,加齢によるシワの増加やたるみにつながる可能性がある。さらに,私たちはアズキエキスがプロテアソーム活性を亢進することによって肌のハリを改善する効果があることを見出した。アズキエキスは,プロテアソーム活性を亢進し,正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン合成とヒアルロン酸合成酵素とエラスチンの遺伝子発現促進効果を有する。また,in vivo試験において顔の弾力とハリ感覚改善の効果も有する。アズキエキスがプロテアソーム活性を亢進させることによってECM成分の合成を促進し,皮膚の弾力性改善効果があることを見出した。

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