抄録
【目的】 官能評価は、機器での測定が難しいヒトの感覚を客観的に評価するために用いられる手法である。食品においては、味や匂い、食感などを客観的に数値評価するために官能評価が用いられている。しかし、信頼性のあるデータを得るためには、パネルに過度の負荷かかからないような評価実験を組む必要があるため、多くのサンプルを同時評価するには不向きである。また、パネルの訓練・育成にも多くの時間が必要である。そこで、本研究では、粉末コーンスープ(お湯でスープ粉末を溶解させて飲むタイプ)を試料とし、ヒトの味覚を機器分析により客観的に表すことを試みた。
【方法】 粉末コーンスープ(98℃のお湯を規定量注ぎ10秒ほど攪拌した後、1分経過したもの)を用いて、当社の訓練パネル12人により分析型官能評価(「香り」「味」「食感」について質問)を行った。同じ試料で、当社の一般社員20人による嗜好型官能評価も行った。さらに、この試料を味覚センサ、匂いセンサ、HPLC(アミノ酸組成分析、糖組成分析に使用)、色差計などの機器を用いて分析し、それぞれの分析値を得た。以上の結果を統計解析し(JMP7.0を使用)、機器分析値から官能評価値、すなわち味覚を表す式を得た。
【結果】 上記方法により、粉末コーンスープにおける味覚が機器分析値のみでほぼ表現できることが示された。また、一部の糖含量やアミノ酸含量と味覚との間に相関関係が見られることが分かった。
以上により、官能評価を実施しなくても、機器分析で粉末コーンスープの味覚を客観的に数値評価できる可能性が示唆された。