日本化粧品技術者会誌
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原著
薄膜旋回型攪拌技術を利用したTiO2分散による紫外線遮蔽効果の顕著な改善
浅野 ちひろ高橋 唯仁春藤 晃人伊藤 新次米澤 徹
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2022 年 56 巻 3 号 p. 281-289

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抄録

ナノメートル領域の直径をもつ酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)の無機微粒子は,透明性や紫外線(UV)防御などの優れた光学特性をもつため,サンケア製品を中心として化粧品業界にも幅広く活用されている。しかしながら,ナノレベルの超微粒子はその大きな表面エネルギーのために製剤中で二次凝集を形成し,製品の機能を低下させる要因となっている。そこで本研究では,それらの凝集状態を解消するべく最適な製造プロセスの検討を試みた。新しいプロセスとして薄膜旋回型高速攪拌機をTiO2微粒子の分散に利用し,サンケア製品に関わる各種特性にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果,微粒子酸化チタンの分散において周速の増加に伴って単分散を示すシャープな粒度分布となると同時に,分光光度計で測定した紫外線透過率との相関が認められた。さらに,W/O,O/Wの2種類のクリーム状サンケア製剤を調製し,紫外線防御指数(SPF)をSPFアナライザーで測定したところ,散乱剤の凝集が効果的に解砕されていることとSPF値の増加に相関がみられ,特に周速30m/s以上の速度で調製したものでは,SPF値の顕著な増加が確認され,紫外線吸収剤を含まないノンケミカル処方,かつ5wt%という低い散乱剤濃度にもかかわらず,SPF30に近い値を示した。これらの結果は,サンケア製品の機能性の向上に分散機の条件が寄与することを意味し,機能性製品における攪拌プロセスの重要性が示されたので,ここに報告する。

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