2022 年 56 巻 4 号 p. 349-354
近年,生活者の多様なライフスタイルや環境変化に伴い,身だしなみや健康維持の重要性に対する意識が高まっている。2020年以降,COVID-19の流行をきっかけに,「家で過ごす時間の増加」が要因となり,スキンケアやヘアケアを入念に行うようになるといった意識や行動に変化が起きている。特にヘアケア業界においては,高価格帯のヘアケア製品やアウトバスを含めたトリートメントの市場が伸びている。その背景には,SNS を中心としたデジタルコミュニケーション施策による若年層の行動変容が影響していると推察する。マスク生活の終息が依然として見えない中,顔よりも,マスクで覆われていない「髪」の美しさがその人の印象を左右する大きなファクターとして捉えられるようになり,これまで以上にヘアケアを重要視する風潮が高まることが予想される。そのため,今後,生活者の実態を捉えた製品開発がより一層必要になるだろう。本報では,定量調査結果から読み解く生活者の着目すべき価値観とヘアケアの実態,また毛髪の構造や特徴に関する基礎知識と毛髪評価手法について,実際の開発事例を交えながら解説する。