抄録
本研究では, 芯物質として油溶性保湿剤を含有する洗顔剤用不透過性PVA (ポリビニルアルコール) 膜マイクロカプセルの構造と拡散挙動について報告する。
近年, 化粧品分野においても新しい機能付与が求められており, 新基材を好適に配合する事が必須技術となってきている。ところが, これらの新基材は概して製品中での安定配合が難しい。
結晶部を有するPVA膜マイクロカプセルは, 水溶性高分子を用いる改良ソルトコアセルベーション法で調製される。商品外観及び使用時の触感から平均マイクロカプセル粒子径300μmが要望された。また, 製造時破壊せず使用時に破壊する商品設計を満足することから平均膜厚3μmに設定した。
洗顔剤中での油溶性保湿剤のマイクロカプセル中の残存率を測定した結果, 汎用のゼラチン膜マイクロカプセルと比較して, PVA膜マイクロカプセルでは大幅に残存率が向上した。油溶性保湿剤の残存率測定結果から求めた油溶性保湿剤のマイクロカプセル膜中の拡散係数と, DSC法により求めたPVA膜の結晶化度との間には良い相関が見られた。これより, 緻密な結晶部の存在が物質の不透過性を向上させることがわかった。