日本化粧品技術者会誌
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29 巻, 3 号
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  • 高野 昭子, 村田 友次, 田端 勇仁
    1995 年 29 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    セラキルアルコールは水を含有して11-88℃付近で液晶を形成する。セラキルアルコールの液晶は35℃付近で長時間, 水を放さず水分保持力がきわめて高い。抱水性に関してもラノリンの10倍を超える抱水力を確認した。また, ヒト皮膚上での水分量経時変化を測定した場合でも他の油相成分とは異なる特異的な保湿性が認められた。
    セラキルアルコールは保湿成分として大きな役割を持ち, 皮膚や毛髪に優れた効果をもたらすことが期待できる。
  • 松沢 幸代, 三上 直子
    1995 年 29 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    毛髪が濡れている状態でのきしみ感を評価した。その結果, 毛髪の官能でのきしみ感と動摩擦係数との間に高い相関があることが判明した。
    上記の評価方法を用いて, 湿潤剤のきしみ感に対する効果を調べた。湿潤剤は, 汎用性の高い原料であるPCA-Na, 1, 3-BG, グリセリン, ソルビトール, Na乳酸を用いた。その結果, シャンプーの主剤として汎用性の高いSLESに対しては, PCA-Naが最もきしみ感改善効果を有することがわかった。
    続いて, PLA-Naを各種界面活性剤に併用した系でのきしみ感改善効果を比較した。その結果, 界面活性剤の構造の末端にスルホン酸基を有する界面活性剤に対して, 特にきしみ改善効果を有することがわかった。
  • 前山 薫, 辻出 昌弘, 上田 清資, 加藤 忠哉
    1995 年 29 巻 3 号 p. 234-241
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    通常用いられる界面活性剤を使用することなく, 板状無機化合物と水溶性高分子の混合によって形成された複合体に, 化粧品に必要な油性成分および水性成分を添加することにより化粧品用O/W型エマルションを調製した。使用した原料は板状無機化合物として3-八面体型スメクタイト構造をもつ合成Na型コロイド性含水珪酸塩と水溶性高分子としてポリエチレングリコール (PEG) であった。この複合体は, 特異的に無機化合物表面上にPEGが吸着することで安定化されているものと推測される。
    まず混合物を通常のホモミキサー (8000rpm) で分散させたのち, 油性成分と水性成分を加えて100MPa以上の超高圧ホモジナイザーでさらに分散処理し, 安定なエマルションを調製した。
    安定化機構の解明は, 試料を凍結させて走査型電子顕微鏡観察法を用いて行った。その構造はカードハウス構造からなり, この特異な三次元巨大構造によりエマルションが安定化されていることが判明した。パラレルプレート型レオメーターを用いる粘弾性測定より, これらの構造はせん断力に応じて破壊と回復を可逆的に繰り返すことが分かった。
    この特異的な安定化機構により, 界面活性剤を使用せずに実用上の安定性を維持しつつ化粧品として必須のレオロジカル特性を付与することが可能となった。
  • 菅 千帆子, 木村 知史
    1995 年 29 巻 3 号 p. 242-251
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧行為, 例えばメークアップをしたり香水を使ったりすることの有用性は明白なことであるが, これらの有用性を定量することは容易ではない。というのは, これらが定義したり測定したりすることが困難である心理的・生理的性質を含んでいるからである。我々は, 化粧行為により得られる喜び (pleasure) とユーザーの健康 (well-being) との関係をしらべる過程で, 化粧品を使用することが免疫学的に有用であることを示唆する結果を得た。
    メークアップを行うことで思わず美しくなった自分をみたとき, それが予想できなかったときほど気分は高揚する。我々は, このような体験が身体の免疫系を活性化し, 同時に免疫抗体濃度を増加させることを発見した。また, 快適な香りを嗅いだときにも同様の免疫反応が起こることも発見した。免疫抗体濃度の変化の定量には, 被験者の唾液中に含まれる免疫抗体「分泌型イムノグロブリンA (S-IgA) を測定した。
    化粧品における精神神経免疫学的な有用性の発見は, 皮膚表面での機能的効果を越えた化粧品の新しい有用性の探索につながると考えられる。また本研究にて得られた結果は, 化粧品がユーザーの心と身体に有用であることの一つの証拠を示したと考えられる。
  • 貴山 健太郎, 山本 恒, 中野 洪, 清宮 章
    1995 年 29 巻 3 号 p. 258-265
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 芯物質として油溶性保湿剤を含有する洗顔剤用不透過性PVA (ポリビニルアルコール) 膜マイクロカプセルの構造と拡散挙動について報告する。
    近年, 化粧品分野においても新しい機能付与が求められており, 新基材を好適に配合する事が必須技術となってきている。ところが, これらの新基材は概して製品中での安定配合が難しい。
    結晶部を有するPVA膜マイクロカプセルは, 水溶性高分子を用いる改良ソルトコアセルベーション法で調製される。商品外観及び使用時の触感から平均マイクロカプセル粒子径300μmが要望された。また, 製造時破壊せず使用時に破壊する商品設計を満足することから平均膜厚3μmに設定した。
    洗顔剤中での油溶性保湿剤のマイクロカプセル中の残存率を測定した結果, 汎用のゼラチン膜マイクロカプセルと比較して, PVA膜マイクロカプセルでは大幅に残存率が向上した。油溶性保湿剤の残存率測定結果から求めた油溶性保湿剤のマイクロカプセル膜中の拡散係数と, DSC法により求めたPVA膜の結晶化度との間には良い相関が見られた。これより, 緻密な結晶部の存在が物質の不透過性を向上させることがわかった。
  • 富田 眞代, 石渡 勝己, 高松 翼, 松岡 昌弘
    1995 年 29 巻 3 号 p. 266-269
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    公的試験から有害試薬を排除する目的で一部の酸化チタン関連原料に設定された粧配規一般試験法「酸化チタン定量法」の他の酸化チタン関連原料への適用性の検証, 並びに各種表面処理酸化チタンへの適用条件の検討を行った。
    亜鉛アマルガム法で規定される粧原基酸化チタンには代替法として十分適用が可能であり, 精度も変動率1%以下と良好であった。アルミナ等の無機物, 脂肪酸及びシリコンで各々表面をを処理した酸化チタンについては, シリコン処理を除き, 本試験法がそのまま適用可能であった。シリコン処理酸化チタンは, 500°, または800° 2時間強熱前処理することで適用が可能となり, 800° 2時間の強熱処理は共通の前処理法としての位置付けも可能であった。これにより, ファンデーション等の製品中の酸化チタン定量にも応用でき, 硫酸への溶解時間の固定 (2時間) と共に本試験法を規定化することができた。
  • 岡本 存生, 榊 幸子, 正木 仁
    1995 年 29 巻 3 号 p. 270-273
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    深い皺と色素沈着を特徴とする光老化皮膚と活性酸素種の関係は, 現在多くの研究者達により研究されている。
    我々は既に, UVB照射によりマウス由来線維芽細胞中にhydroxyl radicalが生成することを確認している。
    今回我々は,polyhydroxybenzoic acid誘導体のhydoxyl radicalに対する消去活性をESRスピントラップ法及びヒト真皮線維芽細胞培養系により評価した。
    今回検討を行った化合物のうち, ESRスピントラップ法及びヒト線維芽細胞培養系の両法においてgallic acidが最も高い消去活性を示した。
    さらに, gallic acidのエステル類についてhydroxyl radicalによる細胞傷害に対する防御効果を検討した。その結果, エステルと過酸化水素の共存下, またエステルによるプレトリートメント後の過酸化水素への暴露の両系において, stearyl esterが細胞傷害に対して最も強力な防御効果を示した。
  • 是沢 猛, 橋本 隆太郎
    1995 年 29 巻 3 号 p. 274-278
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    天然油脂類のグリセリンに結合しているそれぞれのアシル基は, その結合位置に規則性のある事が知られている。
    ラノリンは75種類のアルコールと138種類の脂肪酸とのエステルで, 薄層クロマトグラフィーにより5つのスポットに分離する事が出来る。脂肪酸組成は, クロマトグラフィーにより確認することが出来, 我々はそれぞれのアルコールに結合しているアシル基に規則性のある事を推察した。
    ノルマル脂肪酸はヒドロキシ脂肪酸より多くコレステロールと優先的に結合していた。また, イソ脂肪酸はラノステロールに, そして, ヒドロキシ脂肪酸は脂肪族アルコールと結合していた。
  • 矢尾 欣治, 粧工連色素専門委員会 , 日本化粧品工業連合会
    1995 年 29 巻 3 号 p. 279-281
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    赤色201号 (リソールルビンB) は厚生省令において, モノNa塩と定義されている。一方USAにおいては, FDAは1983年その分析結果よりリソールルビンBは, モノNa塩よりジNa塩であるとしてその化学名を変更した。
    我々は, 赤色201号に結合しているNaイオン量をICP (誘導結合プラズマ発光分光分析装置) にて測定したところ, 赤色201号には2個のNaイオンが結合している結果を得た。
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