日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
Print ISSN : 0387-5253
ISSN-L : 0387-5253
植物抽出物の細胞外マトリックス分解酵素に対する阻害作用
大林 恵京谷 大毅枡田 邦彦岡野 由利正木 仁
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 32 巻 3 号 p. 272-279

詳細
抄録

長期間にわたるUVA暴露は, 皮膚の「たるみ」や「深いしわ」に特徴付けられる光老化を引き起こす。このような臨床的症状は細胞外マトリックスの構造変化に由来すると考えられる。正常な真皮構造を維持するために, コラーゲン, エラスチンおよびグリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックス成分は産生・分解を繰り返している。この産生・分解のアンバランスが真皮構造の変化の原因となると考えられる。光老化による真皮マトリックスの構造変化を阻止あるいは改善する方法として, われわれは紫外線暴露により活性が上昇する細胞外マトリックス成分分解酵素 (コラゲナーゼおよびエラスターゼ) の活性をコントロールすることに注目した。そこで, それぞれの酵素活性に対し阻害作用を有する有効成分を探索した。その結果, ユーカリ抽出物がI型コラゲナーゼおよびヒト線維芽細胞由来コラゲナーゼに対して, またセイヨウニワトコ抽出物が炎症に伴い浸潤してくる好中球由来エラスターゼ (セリンプロテアーゼ) の活性に対して高い阻害作用を示すことがわかった。これらのことはユーカリ抽出物がUVA暴露後に線維芽細胞が分泌するI型コラゲナーゼ (MMP-1) を阻害することによりI型コラーゲンの分解を阻害することを示唆する。さらに、セイヨウニワトコ抽出物は好中球由来エラスターゼ活性を阻害する成分として有効である。

著者関連情報
© 日本化粧品技術者会
前の記事 次の記事
feedback
Top