抄録
頸部は顔面に次いで露出されることも多く光老化が現れやすい部位と考えられるが, その皮膚生理に関する研究知見はほとんど報告されていない。そこで, われわれは18-69歳の女性61名を対象に頸部皮膚生理を測定し, 顔面との比較および加齢変化について解析を行った。その結果, 頸部は顔面に比べ角層水分量は多く, TEWLは低く角層バリア能は高かった。角層細胞面積は大きく, 角層ターンオーバーは遅いことが示された。また, 皮膚厚は薄く, 皮膚伸展性が高く, 皮溝は深く均一であった。顔面よりも少ないが, 頸部角層細胞中にもゼラチナーゼ活性が認められ, 日光の影響を受けていることがわかった。加齢変化に関しては, 顔面と同様に弾力性の低下が認められるが, 皮溝の異方性が増加し, 頸部特有の加齢現象を呈することがわかった。頸部は露光部である顔面と非露光部である体幹の間を示している皮膚生理パラメータが多く, 自然老化と光老化の影響を受けていることが示唆された。この結果を基に設計した首専用化粧品のプロトタイプ化粧品について4週間の連用テストを実施した結果, 連用前後で角層水分量は有意に増加し, ハリや皮膚の明るさ向上に高い実効感があった。