日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
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40 巻, 1 号
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  • 石田 かおり
    2006 年40 巻1 号 p. 3-15
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧は歴史上一度も途絶えたことがなく, 世界中どの地域の人間も化粧をしている。こうした時間的・空間的普遍性を持つ化粧ゆえ, 人類は化粧せずには生きられない動物と言うことができる。人類は化粧で何を求め何を表現してきたのか。世界の歴史的エピソードをいくつか見ることを通して, 近代化によってもたらされたファストライフの化粧で求める美しさがファストビューティーであることがわかる。ファストビューティーは画一的な美で, 美しさにとって若さが不可欠な要素である。そのために若さを保つまたは若返るための即効性が化粧品に求められる。これに対してスロービューティーを今後の美的価値として提案する。スロービューティーは美的価値の多様化で, 「人それぞれ・年それぞれの美しさ」と表現される。美の基準は個人に内在化し, 毎日の積み重ねによって得られるために, 加齢とともに違った美を実現することである。
  • 平河 聡, 太田 尚子, 島岡 昌幸, 禹 満, 山本 一哉
    2006 年40 巻1 号 p. 16-22
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    小児におけるアトピー性皮膚炎は生後2-6ヵ月頃に発症する場合が多いと言われている。アトピー性皮膚炎の発症機序はアレルギー的側面に加え, 角層バリア機能の異常が重視されている。しかしながら, この時期の角層バリア機能に着目した研究は少ない。そこで, 本研究では角層細胞面積 (the Average Projected Area of Comeocytes: 以下APAc) を角層バリア機能の指標として, 生後1ヵ月-生後12ヵ月の検討を試みた。その結果, 生後1ヵ月児のAPAcは成人と同程度の大きさであるのに対し, 生後6ヵ月までに頬部, 上腕内側部ともに減少することがわかり, アトピー性皮膚炎の発症時期前後に角層バリア機能の低下が起こっていることが推察された。また, 同一保育園に通園する0-5歳児の12月の上腕内側部において, アトピー性皮膚炎またはアトピー素因を有する対象のAPAcはそれに該当しない対象と比較し, 有意な差を認めた。さらに治療中の患児において, 皮膚所見の変化に伴いAPAcの変動が認められた。以上のことから, 小児における角層細胞面積の減少に示される角層バリア機能の低下がアトピー性皮膚炎の発症に関与していると考えられた。
  • 國澤 直美, 舛田 勇二, 高田 恵子, 猪股 慎二, 沖 睦子, 大村 孝之, 津田 孝也, 高橋 元次
    2006 年40 巻1 号 p. 23-33
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    頸部は顔面に次いで露出されることも多く光老化が現れやすい部位と考えられるが, その皮膚生理に関する研究知見はほとんど報告されていない。そこで, われわれは18-69歳の女性61名を対象に頸部皮膚生理を測定し, 顔面との比較および加齢変化について解析を行った。その結果, 頸部は顔面に比べ角層水分量は多く, TEWLは低く角層バリア能は高かった。角層細胞面積は大きく, 角層ターンオーバーは遅いことが示された。また, 皮膚厚は薄く, 皮膚伸展性が高く, 皮溝は深く均一であった。顔面よりも少ないが, 頸部角層細胞中にもゼラチナーゼ活性が認められ, 日光の影響を受けていることがわかった。加齢変化に関しては, 顔面と同様に弾力性の低下が認められるが, 皮溝の異方性が増加し, 頸部特有の加齢現象を呈することがわかった。頸部は露光部である顔面と非露光部である体幹の間を示している皮膚生理パラメータが多く, 自然老化と光老化の影響を受けていることが示唆された。この結果を基に設計した首専用化粧品のプロトタイプ化粧品について4週間の連用テストを実施した結果, 連用前後で角層水分量は有意に増加し, ハリや皮膚の明るさ向上に高い実効感があった。
  • 稲場 隆一, 高橋 和久, 熊谷 重則
    2006 年40 巻1 号 p. 34-40
    発行日: 2006/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    遺伝的アルゴリズム (GA) は, 生物の進化のメカニズムを真似てデータ構造を変形・合成・選択する解析法で, 特に膨大な数の要素や, それらの組合せが無限にあるときに特に有効な手法である。本研究では, このGAを, 新規化粧品原料すなわち可視光に対する透明性を有しつつ紫外光を効果的に反射し得るUV反射複合粉体の設計に用いた。GA解析の結果, マイカを核にし, 内層から27nmの酸化チタン, 42nmのシリカ, 33nmの酸化チタン, 115nmのシリカからなる多層膜に覆われた複合粉体が設計図として得られた。ついで, この設計図に従い複合粉体の調製を行い, その化粧品原料としての特性を評価した。その結果, 本研究で得られた複合粉体は, 期待されたとおりに可視光に対する透明性を有しつつ紫外光を効果的に反射することができた。さらに, 通常の酸化チタンに比べて使用感の上でも優れていた。
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