抄録
近年, カオス的遍歴と呼ばれる現象が, 大域結合写像系やニューラルネットにおいて観測されている.カオス的遍歴を示す力学系では, あたかも発展規則を決めるルール自体が動的に変化しているようにみえるため, そのような力学系はルールのダイナミクスをボトムアップ的に記述していると考えることが可能である(なお, ルールの動的な変化を考えることは, 進化や学習の問題を力学系の枠組で捉える際に重要と思われる).
そこで我々は関数シフトというルールダイナミクスの記述枠組を導入し, その枠組を用いてカオス的遍歴的なダイナミクスを示す単純な力学モデルを構成する.そしてモデルの統計的な性質を解析および数値計算によって示す.