抄録
SCMの分析・評価・意思決定支援を行うツールとして,シミュレータは有効である.しかし従来のシミュレータには,(1)顧客需要,サプライヤの供給能力などの不確定要素の扱いが不十分である,(2)シミュレーション結果は,起こり得る可能性の中のただ1つを表したものである,(3)結果をどの程度信頼してよいかなど,結果の分析がほとんどできない,という3つの問題がある.そこで本研究では,Crystal Ballを用い不確定要素を考慮した(a)特定日の複数回シミュレーションと(b)一定期間の1回シミュレーションが行えるSCMシミュレータを開発することにより,これら3つの問題を克服することを試みた.実際に動作させたところ,このシミュレータで4プレイヤが参画するサプライチェーンを表現することができ,その結果について,信頼度の計算など様々な分析が行えることを確認した.今後の課題は一定期間の複数回シミュレーションを行えるようにすることである.