抄録
本研究は,複合現実感技術を応用した工業デザイン向け製品デザインシステムに関するものである.従来のコンピュータ支援設計(CAD)システムでは,ユーザが自由に形状を変形できる反面,表示は平面ディスプレイや両眼視差を利用したステレオディスプレイを用いており,最終製品の持つボリューム感,実在感を提示することは困難であった.そのため,CADシステムでいったん設計した後,製品デザインの評価のために3次元プリンタなどのラピッドモデラを用いてモックアップを作成する必要があり,最終デザインに至るまでこのサイクルを繰り返す必要があった.本研究では,複合現実感技術を応用し,モックアップにバーチャルな陰影情報を付加することで,モックアップの実在感を損なわずにボリューム感を制御し,また微妙な形状操作を行えるようにし,CADシステムの設計自由度とモックアップの実在感を両立させるシステムを提案する.また,ユーザが自然かつ直感的に形状操作できるようなユーザインタフェースを提案する.