抄録
我々は,複数の出力むだ時間が独立したチャネルに存在する多変数系を対象に,状態の推定誤差が任意に配置した有限個の極の速さで減衰する状態予測器を構成する手法を検討している.より広いクラスの入出力むだ時間系を対象とした従来の手法では,可観測性行列の条件数がむだ時間の増加に対して指数関数状に増加する.これに対し我々の手法では,可観測性行列の条件数がむだ時間に依存せず,オブザーバゲインの設定が容易となり,数値計算の安定性も高い.本発表では,むだ時間の短い出力から得られる情報を最大限に利用して状態予測を行うように,過去に提案した手法を改良し,数値例を用いて有効性を検討する.