抄録
本論文では,サンプル値系およびむだ時間系の解析および設計において重要な役割を果たす,補正型Fast-Sample/Fast-Hold近似による離散化計算を改善する手法について,サンプル値系のH∞離散化を通して考察する.従来の離散化手法は,取り扱いが厄介な作用素を準有限ランク近似して扱うという手法であるが,直達項が零行列に比較的近い構造を持ったときでも,フルランク行列に近い構造のときでも本質的に変わらない処理を行うというものであった.そこで本稿では,直達項の構造に着目することで,離散化に際して現れる行列のサイズをより小さく抑えることができる離散化の手法を提案する.最後に数値例を通して,提案手法が計算時間や計算機のメモリー負荷において,従来手法よりも優位性を持つことを示す.