抄録
雄カイコガはフェロモン刺激を触角で受容することによって,フェロモン源定位行動として定型化されたジグザグターン-回転歩行を発現する.この運動に対する指令は,神経行動学および神経生理学的実験により,カイコガの前運動中枢(LAL-VPC) で生成されると考えられていることが示された.近年,LAL-VPCを構成する主要なニューロンが個別に同定され,その各ニューロンの位置や形態,神経伝達物質,結合領域,フェロモン刺激後の生理応答などが精緻な実験により明らかにされつつある.そこで本研究では,実験により得られているニューロン生理応答と形態的結合情報から,LAL-VPCにおいて運動指令の生成に関わるニューロン間の機能的結合を推定し,ニューロンのダイナミクスを組み込んだシミュレータによりLAL-VPCの基本回路構造の推定およびそのモデル応答を検証した.