脳卒中の外科
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特集 破裂脳動脈瘤の急性期治療―原 著
血腫を伴う破裂脳動脈瘤の急性期治療戦略と周術期管理
村岡 賢一郎家護谷 泰仁五月女 悠太松田 勇輝佐藤 悠田邉 智之廣常 信之西野 繁樹
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2021 年 49 巻 6 号 p. 433-438

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抄録

動脈瘤破裂は,しばしば脳内血腫や軟膜を破壊するようなmassiveな脳槽血腫を伴う.術後の血腫増大による脳実質損傷の拡大は予後を悪化させる可能性があるため,急性期の治療は血腫による影響を考慮した戦略が必要となる.当院における血腫を伴う破裂脳動脈瘤治療例において,急性期手術後の血腫量の増大の有無に注目して,周術期治療戦略の影響と転帰に関して後方視的に検討した.2007年1月から2018年9月の間,来院時CT検査にて血腫を伴い,急性期に手術を行った破裂脳動脈瘤106例に対し,術後の血腫増大因子として,血腫の量・局在,動脈瘤に対する治療手段,術後の抗血管攣縮治療の開始時期などの関連を調べた.その結果,106例中23例(21.7%)に血腫増大が認められた.血腫増大の要因として治療手段の影響が大きく,開頭クリッピング術後の増大は9.1%であったのに対し,コイル塞栓術は42.5%で増大した(p=0.0001).血腫の局在に関しては,シルビウス裂の血腫に増大傾向が認められた(p<0.05).抗血管攣縮薬を開始した時期は血腫増大群で早かった.コイル塞栓術において血腫増大率が上昇した原因として発症から手術開始までの経過時間の関連が示唆された.血腫増大を低減するためには,手技の選択において発症からの経過時間を考慮すること,抗血管攣縮薬の投与開始は術後24時間以降に開始することが望ましいと考えられた.

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© 2021 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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