脳卒中の外科
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特集 中大脳動脈瘤の外科的治療―原 著
中大脳動脈本幹(M1)部動脈瘤の臨床的特徴と手術成績
河本 俊介深谷 春介安部 欣博奥貫 かなえ角 拓真菊地 慈金 彪
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2021 年 49 巻 6 号 p. 419-425

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抄録

中大脳動脈(MCA)のM1部に発生した動脈瘤の臨床的特徴と直達術における注意点,および手術成績について検討した.対象は2011年から 2019年に直達術を行った連続38患者で,男性12,女性26,平均年齢60.7歳,動脈瘤径は平均5.3 mm,発生部位はearly frontal branch(EFB)17,lenticulostriate artery(LSA)10,anterior temporal artery(ATA)11で,EFBの全17例およびLSAのうち7例が上向き,LSAの3例が後方向き,ATAは11例すべて下向きであった.多発例は17例(44.7%)にみられ,同側MCAの動脈瘤の合併が10例と最多であった.手術はtrans-sylvian approachで行い,シルビウス裂を末梢からcarotid cisternまで広く開放して行った.瘤の脳葉への埋没は上向きの瘤の70%でみられ,動脈瘤の全周性確認のためにsubpial dissectionを行った.近接するLSAはEFB瘤の9例およびLSA瘤の10例(全例)でみられ,うち4例で剝離できず,このうち1例はwrappingに変更した.MEP変化は3例にみられたが,2例ではクリップ修正により,1例ではクリップ除去により回復した.術後のMR拡散強調像にて4例に穿通枝領域の高信号域を認めたが,すべて無症候性であった.M1部の動脈瘤は,適切なモニタリング下に,十分な術野展開のもと全周性に周囲を確認しつつクリッピングを行うことで,症候性の合併症なく治療を行うことが可能である.

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© 2021 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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