脳卒中の外科
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症  例
椎骨動脈狭窄症に対する血管内治療後に感音性難聴の改善を認めた1例
秋 達樹熊谷 信利松原 博文石黒 光紀加藤 貴之白紙 伸一今井 秀
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2021 年 49 巻 6 号 p. 453-457

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抄録

今回,われわれは脳梗塞に感音性難聴を合併した椎骨動脈狭窄症の症例に対して経皮的血管形成術(PTA)を行った結果,同側の難聴の改善も認めたまれな1例を経験したので報告する.症例は69歳男性.今回,めまいと歩行障害の主訴で救急受診し,小脳および脳幹梗塞を認め入院となった.DSAでは右椎骨動脈は低形成で,両側の後交通動脈を介した後方循環への血流は不良であった.優位側の左椎骨動脈はWASID法で90%の狭窄を認めた.また,来院時より左耳の聴覚低下も伴っていた.入院後はただちに積極的内科的治療を開始したが,数日後さらに脳梗塞の増悪を認めたため,左椎骨動脈狭窄に対してPTAを施行した.PTA後は狭窄率50%に改善した.術後,画像上も脳梗塞の再発なく経過し,左側の難聴については速やかに改善傾向を認めた.椎骨脳底動脈系の脳梗塞において感音性難聴を合併する場合がある.原因として特に前下小脳動脈とその分岐である内耳動脈が関与するといわれており,その頻度は数%といわれている.一方で,聴覚障害に対しては保存的に加療される場合が多く,血管内治療後に感音性難聴が改善したという報告はほとんどない.本症例においては内科的治療に抵抗性の椎骨脳底動脈狭窄症に対して,脳梗塞の再発予防を第一目的としてPTAを行ったが,これにより早期に内耳の循環不全も改善し,聴力改善に寄与したと推測された.

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© 2021 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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