脳卒中の外科
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症  例
連続して破裂した多発脳動脈瘤の1例
佐藤 正夫元持 雅男
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2022 年 50 巻 1 号 p. 50-54

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抄録

多発脳動脈瘤が短期間に連続して破裂した症例を経験したので報告する.症例は50歳,女性.既往歴として未治療の高血圧,飲酒歴,喫煙歴を有し,職場にて突然頭痛を生じ独歩来院した.来院時,血圧161/105mmHg,心拍数73bpm,頭部CT上脳底槽を中心に広範なくも膜下出血(WFNS Grade I,Fisher Group III),3D-CTAにて左中大脳動脈分岐部に6mm大の形状不整な脳動脈瘤,左前大脳動脈末梢部(A2-3)に4mm大の脳動脈瘤を認めた.くも膜下出血の分布,脳動脈瘤の大きさ,形状より左中大脳動脈分岐部動脈瘤が破裂したと考え,来院日に左前頭側頭開頭にて脳動脈瘤頚部クリッピング術を行った.術後経過は順調であったが,Day 5に強い頭痛が再度生じた.頭部CTにて左前頭葉内側に脳内血腫を伴う新たなくも膜下出血,3D-CTAにて左A2-3部動脈瘤の増大を認め,同日両側前頭開頭にて脳動脈瘤頚部クリッピング術を行った.術後の経過は順調で,軽度高次脳機能障害を残し自宅退院した.多発脳動脈瘤が同時にあるいは短期間に破裂した症例の報告例は少なく,くも膜下出血を生じた多発脳動脈瘤において,文献上でもくも膜下出血の分布,脳動脈瘤の大きさや形状,MRI画像(vessel wall imaging)を参考に最初に治療する脳動脈瘤を決めると報告されている.多発脳動脈瘤においては同時に複数の脳動脈瘤が破裂したり,短期間に連続して破裂することがあることに留意すべきである.

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© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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