脳卒中の外科
Online ISSN : 1880-4683
Print ISSN : 0914-5508
ISSN-L : 0914-5508
症  例
数値流体力学を用いた脳動脈瘤破裂点の検討
田中 克浩石田 藤麿中野 芙美谷岡 悟辻 正範鈴木 秀謙
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 50 巻 1 号 p. 55-58

詳細
抄録

数値流体力学(computational fluid dynamics:CFD)を用いた脳動脈瘤破裂点の研究では,破裂点における血行力学的特徴として低いwall shear stress(WSS)と高いoscillatory shear index(OSI)が報告されている.そこで,造影剤漏出により破裂点を同定できた前交通動脈瘤を対象とし,破壊性リモデリングや菲薄化に関連するパラメータを加えて,破裂点の局所血行力学について検討した.3DCTAから患者固有形状モデルを作成し,造影剤漏出部分を削除し破裂点を定義した.非定常解析を行い,ドームと破裂点のWSS,OSI,および圧分布を標準化するために開発したstandardized pressure difference(SPD)を評価した.破裂点では低いWSS,高いOSIおよびSPDの上昇が観察された.これまでの報告と同様に破裂点のWSSは低く,OSIは高かったが,同時に相対的なSPD上昇が併存していた.脳動脈瘤破裂は薄くて低い壁に発生するため,正常な血管内皮細胞が存在しない破壊性リモデリングのある壁における高いOSIが破裂に関与することが示唆された.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top