2022 年 50 巻 2 号 p. 145-151
硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)は形成部位によって特徴的な症状がみられるが,今回海綿静脈洞部(cavernous sinus:CS)dAVFと類似の症状を呈したまれな例である上矢状静脈洞部(superior sagittal sinus:SSS)dAVFを経験したため報告する.
症例は60歳,男性.左眼球運動障害と眼球突出を発症し,精査でisolated sinusのSSSとBorden Type IIのSSS dAVFを認めた.皮質静脈逆流(cortical venous reflux:CVR)は左CSと上眼静脈まで逆流しており,経静脈的塞栓術でSSSの閉塞開通とCVR閉塞を行うとdAVFはBorden Type Iに変化し,症状は3カ月で改善,dAVFも6カ月後には消失した.