2022 年 50 巻 4 号 p. 251-259
脳神経外科術後に合併する原因不明の視力障害(postoperative visual loss:POVL)をreviewし,orbital compartment syndrome(OCS)の関与について検討した.OCSは眼窩内圧の急激な上昇による眼科的救急疾患であり,POVLに眼痛や眼球運動障害・眼瞼/結膜浮腫などの眼窩症状を伴う場合には本病態の可能性が高い.既報69例中,他の診断名で記載された39例を含む47例(68.1%)は後方視的にOCSと考えられ,他の22例でも軽症OCSの可能性を完全には除外できない.OCSの治療は臨床診断に基づく外科的眼窩減圧術が基本であり,その緊急性から画像検査を先行させるべきではないとされている.一般に,発症後2時間を過ぎると減圧による良好な視力回復は期待できないが,それ以降でも効果が得られた報告もあり,本病態の認識と早期診断がきわめて重要である.開頭術後OCSの機序として,近年,皮弁の牽引に伴う間接的眼窩圧迫や眼窩静脈灌流障害を示唆する報告が散見されている.